歯と口の基礎知識

歯はなにでできているの?どんなつくりになっているの?

歯はなにでできているの?どんなつくりになっているの?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

歯は、上層のエナメル層、中層の象牙質、下層の歯髄の3層からできており、滑舌の働きを補助し、食べ物を咀嚼して胃や腸での消化をしやすくする役割を担っています。

歯の基本的な構造

歯の構造と神経

歯は人間の身体の中で一番硬いものですが、いったい何で出来ているのでしょうか?歯の構造は三層からなっていて、一番外側、つまり歯の表面を覆っている層をエナメル質といいます。エナメル質の96%は、リン酸カルシウムや水酸基と呼ばれる成分で出来ているハイドロキシアパタイトという硬い組織です。

歯は白く見えていますが、実はエナメル質の色は半透明で、エナメル質の下にある乳白色の象牙質が透けて見えているのです。

エナメル質の内側にある象牙質は、約70%がハイドロキシアパタイトでできており、残りの30%は、繊維製タンパク質コラーゲンです。エナメル質は大変硬いのですが、象牙質はやわらかくて弾力性があります。

象牙質の内側には、歯髄という神経や血管が通った組織があり、歯に栄養を送っています。虫歯がひどくなって痛むのは、虫歯が出す酸が歯の奥まで溶かして神経を刺激しているせいです。

このように、歯はとても複雑な構造をしています。

  1. エナメル質・・歯の外側を覆う非常に硬い層で、食べ物や飲み物からの酸や摩耗に対して歯を保護します。
  2. 象牙質・・エナメル質の下にあり、歯の本体部分を形成します。神経に近いため、虫歯が進行すると痛みを感じることがあります。
  3. 歯髄・・歯の中心部に位置し、神経や血管が通っています。歯の健康を保つために重要な役割を果たしています。

歯はお口の中で重要な役割を担っており、食事や会話に欠かせないものです。

歯のエナメル質の役割と特徴

エナメル質は、歯の最も外側にあり、私たちの体内で最も硬い組織です。この層があるおかげで、歯は食べ物や飲み物による酸の攻撃や摩耗から守られています。エナメル質は再生能力がないため、一度損傷を受けると修復することができません。そのため、エナメル質を保護することが重要です。

エナメル質を保護するためには、毎日のケアが重要です。

  • 適切な歯磨き・・酸性の食品や飲み物を摂取した後は、すぐに歯磨きをするのではなく、少し時間を置くことでエナメル質へのダメージを軽減できます。
  • フッ素入りの歯磨き粉の使用・・フッ素はエナメル質を強化し、虫歯予防に効果的です。

象牙質とその重要性

エナメル質の下に存在する象牙質は、歯の大部分を構成しています。象牙質はエナメル質に比べて柔らかく、虫歯が進行すると象牙質に達し、そこで痛みを感じることが多いです。象牙質は歯髄とつながっているため、虫歯が象牙質に達すると、虫歯の進行が早まりやすくなります。

象牙質の健康を保つためには、虫歯を早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。定期的な歯科健診を受けることで、象牙質が損傷する前に虫歯を予防することができます。

歯髄(しずい)の機能と役割

歯髄は歯の内部に位置し、神経や血管を含む非常に重要な部分です。歯髄は歯の感覚を司り、外部からの刺激や温度変化に敏感に反応します。虫歯が進行して歯髄に達すると、強い痛みが生じ、場合によっては歯の神経を取り除く治療が必要になることもあります。

歯髄のダメージを防ぐためには、早期の虫歯治療が非常に重要です。痛みを感じる前に定期的に健診を受け、虫歯を未然に防ぐことが理想的です。

歯根膜と歯槽骨の関係

歯は歯根膜という組織で歯槽骨に固定されています。歯根膜はクッションのような役割を果たし、ものを噛む時にかかる圧力を吸収します。歯周病が進行すると歯根膜が破壊され、歯がぐらつく原因となります。

歯周病を防ぐためには、毎日の歯磨きと歯垢除去が不可欠です。また、歯石が溜まると歯根膜や歯槽骨に影響を与えるため、定期的に歯科健診を受けて歯石を除去することが重要です。

食物を食べるための歯の役割

歯の一番大きな役割は、食べ物を飲み込むために噛んで咀嚼することです。しっかり噛んでから飲み込まないと、食べ物を丸飲みすることになり、食べ物で食道や胃や腸を傷つけてしまい、消化もされにくくなります。このように、歯は健康な食生活の為に欠かせないものです。

大人の歯は上下合わせて32本あり、それぞれに名前がついています。

まず上下の前歯と犬歯で食べ物を噛みちぎります。犬歯は根っこ(歯根)が長く強度もある為、ものを噛みちぎる時に重要な歯です。噛みちぎった食べ物は奥歯で細かく擦りつぶされ、小さくなって喉を通って胃や腸に送られます。

歯の硬さってどれくらいあるの?

歯が硬いのは、食べ物を噛みちぎり、擦りつぶして食べるためです。人体の中で歯は最も硬いものですが、物質の硬度をはかるモース硬度ではどのくらいの値になるのでしょうか。

モース硬度は1~10の10段階で表されており、身近なものでは珊瑚が3、鉄や真珠が4、ガラスが5です。硬いものでは、ダイヤモンドが10、ルビーやサファイアが9、エメラルド、アクアマリンが8です。人体では歯のエナメル質が7、人骨は4~5となっています。

歯は発音にも関係している?

入れ歯の方の言葉が聞き取りにくいと感じたことはありませんか? 歯は、滑舌・発音に深く関係しています。歯がきれいに揃っていなければ空気が抜けてしまい不明瞭な発音になってしまいます。入れ歯の方の言葉が聞き取りづらいのはそのせいです。

歯を失うと、歯のない部分から空気が抜けてしまい、本来の発音が出来にくくなります。私たちは普段何気なく言葉を発しているので意識していませんが、言葉を発する際には、舌、唇、頬などの組織を動かすことでお口の奥から外へと空気の流れを微妙に調節しながら発音しています。

歯がないために空気が漏れてしまったり、舌や唇、頬などが思い通りに動かないと、発音に影響が出てしまいます。

歯に再生・修復の能力はあるの?

天然歯の再生・修復能力は歯の部位によって違います。

1.エナメル質の再生と修復

エナメル質は歯の外側を覆っており、人体で最も硬い部分です。エナメル質が損傷した場合に自己修復する能力は基本的にはありません。

しかし、虫歯の初期段階では、脱灰と呼ばれるエナメル質の表面が酸で溶かされる状態を、再石灰化というプロセスを通じて修復することが可能です。

再石灰化とは、唾液中に含まれるミネラル(主にカルシウムとリン)が歯に吸収されてエナメル質が再び硬化することを指します。再石灰化を促進するためには、フッ素を含む歯磨き剤の使用、砂糖の摂取を控える、定期的な歯科健診などが重要です。

しかし、虫歯が進行してエナメル質に穴が空いてしまった場合は、再石灰化だけでは修復出来ません。

2.象牙質の再生と修復

象牙質はエナメル質の内側にある層で、歯の大部分を形成しています。象牙質は破壊されても一定の自己修復能力がありますが、この修復能力は限定的で、虫歯による損傷を完全に修復することは難しいです。

3.歯髄の再生と修復

歯髄は歯の中心部にあり、神経と血管が通っています。歯髄が傷つくと歯に痛みを感じ、重度の虫歯を放置すると神経が死んでしまうことがあります。

歯の構造と材質に関するQ&A

歯は何でできていますか?

歯はエナメル質、象牙質、歯髄の3つの層からなっています。エナメル質は表面を覆い、ハイドロキシアパタイトという硬い組織でできています。象牙質はエナメル質の下にあり、主成分はハイドロキシアパタイトとコラーゲンです。歯髄は歯の中心部に位置し、神経や血管が通っています。

歯は再生や修復できるのですか?

天然歯の再生・修復能力は部位によって異なります。エナメル質は自己修復能力が限定的で、初期の虫歯の状態では再石灰化というプロセスを通じて修復することができます。しかし、虫歯が進行してエナメル質に穴ができた場合は修復が困難です。象牙質も一定の自己修復能力がありますが、重度の虫歯損傷は完全に修復することは難しいです。歯髄も一部の再生能力がありますが、神経が死んだ場合は修復ができません。

歯の健康維持のためには何が重要ですか?

歯の健康を維持するためには、定期的な歯科検診と適切な口腔ケアが重要です。歯磨きは毎日行い、歯垢や歯石を除去することで虫歯や歯周病の予防につながります。また、バランスの取れた食事や砂糖の摂取制限も歯の健康を保つために重要です。定期的な歯科検診では、早期の問題や疾患の発見が可能であり、適切な治療やケアを受けることができます。

まとめ

歯のキャラクター

歯の構造や働き、硬さ、発音など、様々な面から歯についてご説明しました。大切な永久歯を長持ちさせられるように、日ごろから大切にケアしましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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