患者さんの歯が虫歯になっていても、ご本人は全く痛みを感じていないために気付かないことがあります。「虫歯=痛い」は必ずしも正しいわけではなく、初期の虫歯は痛くありません。痛くない虫歯についてご説明します。
目次
痛みを感じない虫歯の原因
神経まで到達していない
初期段階の虫歯(C1やC2)は、まだ歯の表層にしか影響を与えておらず、神経に達していないため痛みを感じにくいことがあります。特にエナメル質や象牙質に限局している場合は、無症状で進行してしまうことがよくあります。
神経がすでに死んでいる
進行が進んでしまった虫歯でも、神経が死んでしまった場合、痛みを感じなくなることがあります。この場合、症状がなくても深刻な状態であり、放置するとさらに悪化する可能性が高いです。
痛くない虫歯の進行リスク
痛みがないことで気づきにくい
痛みがないと日常生活に支障を感じないため、虫歯が進行しても放置されることが多くなります。特に、痛みが出るまで受診を控える人が多く、結果としていざ治療するとなった時には、既に虫歯が深刻な状態まで進行してしまっているというケースもあります。
歯の構造が大きく破壊される
痛みがない虫歯でも、時間が経つにつれて歯の内部が大きく損傷する可能性があります。最終的に、歯が割れたり崩れたりすることがあり、治療がより複雑になるリスクが高まります。
痛みのない虫歯の発見方法
定期健診の重要性
痛みのない虫歯を発見するためには、定期的な歯科検診が重要です。歯科医師によるプロフェッショナルな診断や、レントゲン検査によって、症状が出ていない虫歯も早期に見つけることが可能です。特に、歯の裏側や歯と歯の間の虫歯は、見た目だけではわからないことが多いため、検査を受けることが有効です。
痛みが出ていなくても治療が必要な理由
早期治療で歯を保存
痛みがないうちに虫歯を治療することで、歯をなるべく保存することが可能です。初期段階での虫歯治療は、比較的簡単な処置で済みますが、放置して進行してしまうと神経を抜く治療や抜歯が必要になることがあります。
感染症のリスク
痛みがない虫歯でも、進行していると歯の内部で感染が広がり、最終的に歯周組織や顎の骨にまで影響を及ぼすことがあります。これにより、深刻な口腔感染症のリスクが高まるため、早期に治療を受けることが重要です。
虫歯が痛いとき、歯はどんな状態になっているの?
虫歯が痛い時には、歯はどの程度虫歯菌に侵されていて、どのような状態になっているのでしょうか。
虫歯を引き起こす代表的な細菌であるミュータンス菌は、糖分を栄養にして歯の表面を酸で溶かしながら歯の奥深くへと侵入していきます。
虫歯菌が歯に侵入していくのは、エナメル質→象牙質→神経という順序になります。エナメル質の虫歯(C1)は痛みがなく、削らずに経過観察になるケースが多いです。
エナメル質の内側の象牙質が虫歯になると、熱い物や冷たい物を飲食した時に刺激が神経に伝わり、痛みが生じることがあります。最後の神経に虫歯菌が達してC3の虫歯になったとき、虫歯はズキズキと痛み始めます。
神経まで虫歯に冒された時の虫歯の痛みというのは、眠れないほどの強い痛みが続きますので、我慢せずにすぐに歯科医院で治療しましょう。
虫歯が深くなって痛みを感じなくなったら要注意!
この痛みのピークを超えると、神経が死んでしまい、激しい痛みが治まります。痛くなくなったので、もう歯医者へ行く必要がないと考える方も多く、虫歯はそのまま放置されます。
痛みがなくなっても、虫歯は治ったわけではありません。歯にあいた穴から歯の奥へ、歯を溶かしながら虫歯菌がどんどん侵入していきます。
神経が死んでしまったので痛みは感じなくなりますが、内部では細菌がどんどん増え続けて、虫歯の穴もどんどん大きくなって、歯はボロボロになっていきます。
穴の開いた歯では食べ物が噛みにくくなり、食べ物が詰まりやすくなって、口臭もひどくなります。
その段階になると、虫歯の治療をしようとしても、既に抜歯が必要になっているケースが多くあります。抜歯をまぬがれたとしても、歯の根の治療のために何度も通院しなければなりません。そのため、虫歯は小さいうちに早めの治療が大切なのです。
エナメル質の虫歯は痛くない 象牙質に達すると痛みが出ることもある
エナメル質と象牙質の虫歯の痛みについてご説明します。歯の表面を硬く覆っているエナメル質は、虫歯菌に感染して表面が少し溶けても痛みを感じません。そのため虫歯の初期であるエナメル質の虫歯は、全く痛くなく、患者さんが気づかないことも多いです。
一方、象牙質はエナメル質の中にある歯の基礎ともいえる部分ですが、虫歯の穴が象牙質に達すると、痛みを感じることもあれば、感じないこともあります。
初期の段階ではほとんど痛くありません。まれに敏感な方はしみることがある、違和感がある、たまに少し痛むなどの症状がある方がおられます。しかし象牙質の虫歯は、強い痛みや繰り返す痛みは起こらない場合が殆どなので、少しの症状は忘れてしまう方が多いです。象牙質も神経に近くなれば、次第に痛みを強く感じるようになってきます。
早めの治療が虫歯から歯を救うことになる
虫歯の浸食が象牙質までであれば、神経をとらず通常の虫歯治療で終わらせることができます。つまり、虫歯に関しては、痛みが出たときには手遅れで、神経を取る治療が必要になる可能性が高いのです。
暖かいものの飲食で歯が痛む場合も、虫歯が神経に届いているという目安になります。歯に冷たいものがしみる感じや、違和感があれば、すぐに歯医者で診てもらうことをおすすめします。
また、痛くなる前に虫歯が見つかった場合は、早期発見できたということになり、簡単な治療で済む場合が殆どです。治療せずに経過観察だけで済む場合もあります。
そのため、痛いところがなくても歯の定期検診へ行きましょう。早期発見・早期治療は、治療費が安く済み、治療回数も少なく済みます。もちろん痛い思いをする確率もかなり少ないといえますし、歯そのものを長もちさせることにも繋がります。
虫歯の治療後は虫歯予防に力を入れよう
虫歯の治療が終わった時に、安心してしまって、歯磨きなどのセルフケアをサボりがちになる方がおられます。ブラッシングをサボると、歯に歯垢(プラーク)がついたままになって、やがて歯垢は歯石に変わります。
歯垢や歯石の中には細菌が繁殖しますので、また虫歯になるリスクが高まります。虫歯や歯周病からご自身の大切な歯を守るためには、毎日の歯磨きがとても大切になります。
大きな虫歯を作って何日も激痛に耐えるような体験を二度としないで済むように、今後は予防に力を入れましょう。
痛くない虫歯に関するQ&A
虫歯が痛くない場合、それは初期段階、つまりエナメル質が虫歯になっている可能性が高いです。この段階では虫歯が感じられないことが多いため、定期検診が重要になります。
はい、痛くない虫歯が存在します。特に初期の虫歯、つまりエナメル質が影響を受けている段階では、痛みを感じないことが多いです。
痛みがない場合でも虫歯が見つかったら、早期治療が推奨されます。エナメル質の虫歯ならば経過観察の場合もありますが、象牙質に進行している場合は治療が必要になります。
まとめ
痛みの出ない虫歯と痛みの出る虫歯の違いについてご説明しました。虫歯がどの程度進行しているかは、ご自身ではなかなか判断できませんので、ぜひ定期的に歯医者に通って検診を受けていただくようにおすすめします。
定期検診を受けているか受けていないかが、あなたの歯の運命に大きく影響を及ぼすかもしれません。