歯科医療では歯をなるべく削らない、なるべく抜かない、という治療が主流になってきました。しかし虫歯の進行度によってはどうしても歯を削る必要がある場合もあります。歯を削ることのリスクについてご説明します。
目次
歯を削ることの一般的な目的
歯を削る行為は、歯科治療の一環として非常に一般的です。主に次のような目的で行われます。
- 虫歯の治療・・虫歯が歯に広がる前に、患部を削り取ることで治療します。
- 詰め物やクラウンのための準備・・詰め物やクラウンを装着する前に、削って形を整える必要があります。
- 歯並びや噛み合わせの改善・・矯正治療や補綴物の調整のために歯を削ることがあります。
しかし、患者さんは「歯を削ることは本当に大丈夫なのか?」と不安に思っておられるかもしれません。
歯を削った場合の3つのリスク
歯を削られるのが好きな方はおられないと思います。歯医者が苦手で、診療チェアに座ってタービンの甲高い音を聞くだけで緊張してしまう方も多くおられます。
虫歯治療では虫歯になった部分をきれいに削って詰め物をするのが一般的な治療法ですが、研究が進むにつれて歯を削る治療法に対する考え方が少しずつ変化してきました。
歯を削ることにはデメリットが多く、歯を削るとさまざまな問題が発生することがわかってきたからです。
1.削ったところから虫歯になりやすくなる
一度歯を削ると、削った場所が虫歯になりやすいというデメリットがあります。治療のために削るのに、どうしてそこから虫歯になりやすくなるのか疑問に思われる事でしょう。
歯を削ると、削った部分には凹凸が出来、お口の中の細菌が付着しやすくなります。歯の凹凸の部分で虫歯菌が繁殖すると、その部分が虫歯になってしまい、周囲に広がっていきます。歯を削ることで、虫歯菌が繁殖しやすい環境を作ってしまうことがあるのです。
また、削った部分を保険適用の銀歯で詰めたり被せたりすると、銀歯を装着した部分と歯の間に隙間が出来やすくなり、何年か経過した後にそこから二次虫歯になってしまう方が多いです。
2. 痛みや知覚過敏のもとになる
歯を一部分でも削り取ると、歯の表面が内部の神経に近づきます。神経に近くなると痛みを感じやすくなり、冷たい食べ物や飲み物が歯にしみる知覚過敏を起こしやすくなります。
もし削っている間に歯の神経に触れて激しい痛みが出る場合は、歯の神経を抜く治療が必要になることもあります。
3. 歯髄を取らなければいけない場合にリスクがある
歯髄とは歯の神経のことです。虫歯が進行して深くなり、歯の神経まで虫歯になっている場合は、神経を抜かなければなりません。
神経を抜けばもう痛みは発生しないので安心かというと、そうではありません。痛みを感じないまま、その部分がまた虫歯になってしまう危険があります。痛みを感じないので、虫歯になっていることに気づかず、かなり悪化させて最終的に抜歯になってしまうこともあります。
しかし、削らずに治療できるのは初期虫歯だけで、歯に穴があいてしまうと削らざるを得ません。そのため出来るだけ初期のうちに虫歯を発見することが大事です。
歯を削った治療のあと痛みがあるとき
治療中は局部麻酔で痛みを感じない状態にしますが、治療後に麻酔が切れると痛みが出てくることがあります。この痛みの感じ方には個人差がありますが、知覚過敏のようなしみるような痛みを感じる場合があります。
このような痛みは痛み止めの薬を飲むことで抑えられます。もし痛み止めを飲んでも痛みが止まらない場合は、すぐに歯科医院にご連絡ください。
また、腫れや痛みは体が疲れた時などには激しく出る場合もあります。歯の治療中は出来るだけ激しい運動やストレスがかかるようなことを避けてお過ごしください。
削った歯を適切にケアすることは、治療後のトラブルを防ぐために非常に重要です。以下のポイントに気をつけましょう。
- 丁寧な歯磨き・・削った箇所を清潔に保つため、丁寧な歯磨きが欠かせません。特に歯垢がたまりやすくなるため、注意が必要です。
- 定期的健診・・削った歯に異常がないか、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことが推奨されます。
- 食事の管理・・削った後の歯は一時的に弱くなるため、硬いものや刺激の強い食べ物は避けた方が良いでしょう。
削らなくてもいいケースと治療法
全てのケースで歯を削る必要があるわけではありません。例えば、次のような場合には、削らずに治療が行えることもあります:
- 初期の虫歯・・歯磨きやフッ素の使用で進行を防げる場合もあります。
- 歯並びの改善・・マウスピース矯正や部分矯正によって、歯を削らずに改善できるケースがあります。
患者さんが気をつけるべきこと
歯を削る治療を受ける前には、次の点をしっかり確認しておきましょう。
- 削る範囲・・どのくらい削るのか、削る部分はどこかを明確に確認してください。
- 削る理由・・削る必要がある具体的な理由を聞きましょう。削らない場合のリスクも理解することが重要です。
- ケア方法・・削った後のケアについて、歯科医師にしっかりと指導を受けてください。
歯を削って治療した場合、本当の意味で治るわけではない
歯を削って詰めたり被せたりする治療では、歯は治るわけではなく、修理という言葉がぴったりくるかと思います。それでも確かに痛みがなくなったり、噛めるようになったりと、患者さんのお悩みは解決します。
しかし削ってしまった部分はもう元に戻ることはありませんので、そうなる前の予防が大切ということを理解していただきたいと思います。
歯は削っても大丈夫なのかに関するQ&A
歯を削る治療にはいくつかのデメリットがあります。まず、削った部分から虫歯になりやすくなるというリスクがあります。削った部分に凹凸ができ、そこに細菌が付着しやすくなるため、虫歯が発生しやすくなるのです。また、削った部分を銀歯で詰めたり被せたりすると、銀歯と歯の間に隙間ができ、そこから二次虫歯が発生することもあります。さらに、歯を削ると神経に近づくため、痛みを感じやすくなったり、知覚過敏が生じる可能性もあります。
歯を削ると、削った部分に凹凸ができ、細菌が付着しやすくなります。歯の凹凸部分に虫歯菌が繁殖すると、その部分が虫歯になり、周囲に広がっていく可能性があります。削った部分は歯の組織が削り取られた箇所であり、自然な歯の構造が崩れているため、虫歯菌が繁殖しやすい環境ができてしまうのです。
歯髄を取る治療は虫歯が進行して歯の神経にまで達している場合に行われます。神経を抜くことで痛みはなくなりますが、その部分が再び虫歯になる可能性があります。痛みを感じないために虫歯が進行していることに気づかず、最終的には抜歯が必要になる場合もあります。
まとめ
歯を削るといくつかのデメリットがあります。しかし虫歯が進行してしまったら、削って治療しなければ、虫歯はどんどん悪化していきます。その場合は仕方なく歯を削るわけですが、どの程度削るか、削った後は詰め物なのか被せ物になるのかは、歯科医師と十分に話し合って納得のいく歯科治療を受けるようにしてください。