歯周病予防には歯周病菌がたくさん潜んでいる歯垢を徹底的に落とすことが大切です。それには効果的な歯磨きのコツを会得するのが一番の早道。炎症のあるなしに関わらず、虫歯や歯周病のリスクを小さくするための歯茎のケア、つまり歯磨きの仕方についてご説明します。
目次
歯周病のリスクと予防
歯周病は、歯についた歯垢の中の細菌が歯茎に炎症を引き起こし、進行すると歯を支える骨が破壊され、最終的には歯を失うことがある怖い病気です。この病気は特に40歳以上の方に多く見られます。しかし、歯周病は適切なケアを行えば予防できますので、日常的なケアがとても重要です。
歯周病予防のための正しい歯磨き方法とは?
歯磨きは歯周病予防の基本です。正しい方法で歯を磨くことで、歯垢の蓄積を防ぎ、歯茎の健康を維持できます。
歯ブラシの角度
歯と歯茎の境目に対して、45度の角度で歯ブラシを当てるようにします。この角度で歯磨きをすることで、歯茎の溝にたまる歯垢を効果的に除去できます。
軽い力で磨く
力を入れすぎると歯茎が傷つくことがあります。軽い力で優しく磨くことが大切です。
小刻みに動かして磨く
歯ブラシを小刻みに動かしながら、1本1本丁寧に磨きます。時間をかけて、全体をしっかり磨きましょう。
歯ブラシはどのくらいの圧で歯にあてれば良いの?
歯垢(プラーク)を落とすには、歯ブラシの毛先が歯の全ての面と、歯と歯肉の境目に当たっていることが大前提となります。いかに丁寧に磨いても、ブラシが当たっていない部分はきれいになりません。
特に歯垢がこびりついて出来たバイオフィルムという細菌の集団はネバネバしており、簡単に落とすことは出来ません。力任せにブラシを押しつけて、大きなストロークでゴシゴシ磨いても、細かい汚れは落ちないのです。
歯垢が効率的に落とせないばかりか、力がかかりすぎているために歯や歯肉を傷つけてしまいます。それでは、歯ブラシを歯や歯茎にあてる際の、適切な圧とはどのくらいでしょうか?
通常の歯ブラシでは200gほどの圧といわれています。200gがはたしてどの位の圧なのか、キッチンスケールで歯ブラシの毛先をあてて確認してみても良いですね。
目で見た時の目安としては、歯ブラシの毛先を手の指先の爪に当てて少し押してみてください。爪がわずかに白くなる程度が歯ブラシの圧の目安です。
歯周予防のための歯ブラシの動かし方
歯肉炎を改善するためには適切な磨き方をする必要があります。まず、鉛筆を持つように歯ブラシを持ち、軽い力で歯を磨きます。大抵の人は力が入りすぎているので、ごく軽い力で行います。
歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきに対して直角になるようにあてて、2~3mm程度の幅で小刻みに前後に動かします。一箇所につき20回以上、1~2本の歯の間を小刻みに振動させます。
歯の裏や奥歯で毛先を直角にあてにくい場合は、45度にあてるようにします。2~3mm程度の動きを一箇所20回以上というのが難しい場合は、電動歯ブラシを使いましょう。
歯と歯の間の汚れをかき出すデンタルフロス
歯ブラシでのブラッシングと同様に歯の清掃に欠かせないのが、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助器具です。歯と歯の間は歯ブラシが届かないため歯垢が溜まりやすい場所です。
その場合はデンタルフロスという糸状の補助器具を使う必要があります。歯肉の隙間が大きい方は、歯肉の部分のみ歯間ブラシを使用します。ブリッジのように連結した被せ物をしている方も、フロスが通りませんので歯間ブラシを使います。
フロスや歯間ブラシは、間違った使い方をすると歯肉を傷つけますので
注意が必要です。フロスは勢いよく入れると歯肉に強く当たって出血の原因になりますので、斜めに滑らせながら歯間を通し、歯の側面をスライドさせながら、汚れをかきあげるイメージです。
歯と歯茎の間の三角ゾーンの汚れは歯間ブラシで落とす
歯間ブラシは適切なサイズのものを選択し、横から挿入して使うのがポイントです。歯間ブラシのサイズが大きすぎると、歯茎をこすって傷つけてしまい、出血や歯茎の退縮を招きます。
もし強くあてすぎて歯肉を傷つけてしまっている場合は、一週間ほど補助器具の使用をお休みします。歯肉を傷つけないように、力の入れすぎには十分にご注意ください。
プラークを落とすための歯磨きのタイミング
歯周病を改善するための歯磨きは、食べかすを取ることのみを意識するのではなく、「プラークを落とす」ことを目的としています。そのため歯を磨く時間帯やタイミングに、特に決まりはありません。
昼間は仕事で歯磨きの時間が取れない方は、まず「寝る前」と「起きた後」に歯磨きをしましょう。
寝ている間は唾液が少なくなり、口腔内が乾いて細菌が増殖しやすい環境になるため、寝る前と起きた後は歯磨きには良いタイミングです。
日本の国民の8割が歯周病
歯茎はとても繊細なものです。歯磨きをしっかりとやり過ぎたために、歯茎を痛めてしまい、歯茎の退縮を招いてしまっては元も子もありません。ぜひ正しいブラッシングの仕方をマスターしていただきたいと思います。
ちなみに日本では「国民の8割が歯周病」といわれています。これは歯科疾患実態調査(2005・2011年)で歯肉の出血・歯石・歯周ポケットのいずれかが認められた人が約8割いたということに由来しています。
そのため、歯周病を発症していなくても殆どの方が軽い歯肉炎であるという前提で、歯周病予防に効果のあるブラッシングについてご説明していきます。
歯周病予防のための歯ブラシの選び方
ドラッグストアに行くと、歯ブラシは形や大きさ、毛の硬さ、毛のカットなど、様々なものがあり、どれを買ったらいいのか迷ってしまいます。
歯肉の厚み、エナメル質の強さ、歯磨きの時間やブラシの圧など、歯磨きの仕方はお一人おひとり違いますので、ご自身に合ったタイプのブラシはどういうものか、歯科医院で歯科衛生士にきいてみましょう。
硬い毛先で磨くのが好きな方もおられますが、あまり硬いと歯磨きの度に歯肉やエナメル質が削られて、問題がおこる場合があります。歯肉炎を起こしている方は柔らかめのブラシが良いですし、大きすぎるブラシでは毛先が小さな部分にあたりにくく、歯垢が取れていないということもあります。
また、手磨きが合っているか、電動ブラシが合っているか、いつもの磨き方にもよりますので、お気軽に歯科衛生士におたずねください。
舌のケアって必要?どうやってやるの?
口臭が気になる方は、舌が原因かもしれませんので、舌のケアを行ってみてはいかがでしょうか。
舌の上には「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる白っぽい汚れがあります。その中には歯周病の細菌が棲みついています。
舌をケアするための舌ブラシというアイテムがありますので、頻繁に使う必要はありませんが、時々舌ブラシを使ってケアすると効果的です。
舌の表面は大変繊細な細胞で覆われていますので、絶対にゴシゴシと強くあてないよう注意しましょう。
歯周病予防のための歯磨きのコツに関するQ&A
歯ブラシを適切な圧であてるための目安は通常、歯ブラシの毛先を手の指先の爪に当てて少し押してみることです。爪がわずかに白くなる程度が適切な圧の目安とされています。一般的な歯ブラシでは約200gほどの圧が推奨されています。
歯周病予防のために適した歯ブラシの選び方は個人によって異なります。歯肉の厚みやエナメル質の強さ、歯磨きの時間、ブラシの圧など個人差があるため、歯科医院で歯科衛生士に相談すると良いでしょう。歯肉炎を起こしている方は柔らかめのブラシが適しており、歯間ブラシや電動歯ブラシも選択肢に入れることができます。
歯肉炎を改善するための歯磨き方法として「スクラビング法」(または「スクラッピング法」)がおすすめです。歯ブラシを持つようにして、軽い力で歯を磨きます。歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきに対して直角になるようにあてて、2~3mm程度の幅で小刻みに前後に動かします。歯間ブラシや電動歯ブラシも使用することで効果的な清掃が期待できます。
まとめ
このように、歯周病予防のためには歯ブラシの他に様々な補助器具を使って歯のケアをすることが必要で、それぞれに使い方のコツがあります。
たとえ歯科医院で歯のクリーニングなどの歯周病治療を受けて歯茎の状態が良くなっても、歯磨きなどのセルフケアを徹底しないと、また歯周病を引き起こす細菌がお口の中で増殖してしまいます。
そのため毎日自分で行う「セルフケア」は、歯周病の治療や予防のために大変重要な意味があります。