詰め物・被せ物

銀歯が引き起こすアレルギー反応とその対策

銀歯が引き起こすアレルギー反応とその対策

多くの人々にとって馴染みのある銀歯ですが、実はアレルギー反応を引き起こす可能性があります。銀歯アレルギーとは何か、どのような症状が現れるのか、そしてどのように対処すべきかについてご説明します。

銀歯のアレルギーとは

銀歯

銀歯のアレルギーは、歯科治療で使用される金属製の詰め物や被せ物(一般に「銀歯」と呼ばれる)に対して起こるアレルギー反応です。実際には、純粋な銀ではなく、複数の金属の合金が使用されています。

このアレルギーは、金属アレルギーの一種で、身体が銀歯に含まれる金属を異物として認識し、過剰な免疫反応を引き起こすことで発生します。食物アレルギーや花粉症と同様、身体の防御機構が過剰に働くことが原因です。

銀歯アレルギーは、花粉や食物のアレルギーと比べてあまり知られていませんが、実際には多くの人々に影響を与える可能性がある問題です。

銀歯のアレルギーの主な原因

銀歯のアレルギーの主な原因は、銀歯に含まれる金属成分です。一般的な銀歯の合金には、以下のような金属が含まれています。

  • 亜鉛
  • ニッケル
  • パラジウム

これらの金属の中でも、特にニッケルとパラジウムは強いアレルギー性を持つことで知られています。

アレルギー反応が起こるメカニズムは以下の通りです。

  1. 銀歯から金属イオンが溶け出す
  2. 溶け出した金属イオンが唾液中に入る
  3. 金属イオンが体内に吸収される
  4. 体内で金属イオンとタンパク質が結合し、アレルゲンとなる
  5. 免疫系がアレルゲンを認識し、過剰反応を起こす

このプロセスは、個人の体質や銀歯の状態によって異なり、アレルギー症状の出方にも個人差があります。

銀歯のアレルギーの症状

銀歯のアレルギーの症状は、局所的なものから全身に及ぶものまで様々です。

口腔内の症状

  • 銀歯周辺の歯肉の腫れや発赤
  • 口内炎
  • 舌の痛みやヒリヒリ感
  • 味覚障害(金属味がする、味がわかりにくい)
  • 口腔内の乾燥感

全身の症状

  • 皮膚症状
  • 手のひらや足の裏の水疱(掌蹠膿疱症)
  • 全身の湿疹や発疹
  • かゆみ
  • 頭痛
  • めまい
  • 倦怠感
  • 関節痛
  • 消化器症状(腹痛、下痢など)

銀歯アレルギーの症状は、アレルギー反応が起こってから数日後に現れることもあれば、数か月、あるいは数年後に現れることもあります。そのため、原因の特定が難しい場合もあります。

どのように銀歯アレルギーを特定するか

銀歯アレルギーの診断は、症状の観察と各種検査を組み合わせて行われます。主な診断方法は以下の通りです。

皮膚科、病院でのアレルギー検査

アレルギーがあるかどうかを調べるための様々な検査は、皮膚科や病院で行われます。

  1. パッチテスト・・金属アレルギーの検査にはパッチテストという方法で、皮膚に金属アレルゲンを貼付し、アレルギー反応の有無を確認します。
  2. 血液検査・・患者さんの白血球(とくにTリンパ球)を培養して、そこに金属イオンを加えてアレルギーのある、なしを調べます。

歯医者での診断

  1. 問診・・症状が現れた時期や銀歯の治療歴などを詳しく聞き取ります。
  2. 口腔内検査・・歯科医師が口腔内を詳細に観察し、銀歯周辺の異常を確認します。
  3. 金属成分分析検査・・パッチテストなどでアレルゲン金属が確定した場合に、その金属が身体のどこに存在するかを調べなければなりません。お口の中にある金属の詰め物・被せ物の表面を軽く削って成分の分析をする方法です。
  4. 原因を除去する・・アレルギーの原因となっている詰め物・被せ物を除去し、仮歯を一定期間つけて経過観察を行います。
  5. 修復治療・交換治療・・アレルギーを起こさない材料で詰め物・被せ物の治療を行います。

これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。

銀歯のアレルギーへの対応法

銀歯

銀歯のアレルギーと診断された場合、主な治療法は原因となる銀歯の除去し、アレルギーを起こさない材料に置き換えることです。

1. 銀歯の除去

  • アレルギーの原因となっている銀歯を特定し、除去します。

2. 代替材料への置換

  • セラミック
  • コンポジットレジン
  • ジルコニア
    などの金属を含まない材料で置換します。

3. 薬物療法

  • 症状の緩和のため、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイド薬を使用することがあります。
  • ただし、これらは根本的な解決にはならず、一時的に症状を抑えるものです。

4. 口腔内ケア

  • 残存する金属イオンを洗い流すため、うがいや口腔ケアを行います。

5. 食事療法

  • 金属の吸収を抑制するため、ビタミンCやビタミンEの摂取を増やすことが推奨される場合があります。

6. 定期健診

  • 銀歯除去後も定期的な健診を行い、症状の改善を確認します。

銀歯のアレルギーの治療は、患者さんの状態に応じて行われ、症状の程度や原因となる金属の種類によって、最適な治療法が異なる場合があります。

銀歯のアレルギーを防ぐためには

銀歯のアレルギーを完全に予防することは難しいですが、リスクを低減するための方策があります:

1. 事前のアレルギー検査

銀歯の治療を受ける前に、金属アレルギーの検査を受けることをお勧めします。

2. 既往歴の確認

金属アレルギーがある場合は、歯科医師に必ず伝えましょう。

3. 代替材料の選択

可能な限り、金属を含まない材料を選択することで、アレルギーのリスクを減らせます。

4. 定期的な歯科健診

早期発見・早期対応のため、定期的な歯科健診を受けましょう。

5. 口腔内の健康管理

適切な口腔ケアを行い、虫歯や歯周病を予防することで、銀歯の治療自体の必要性を減らすことができます。

6. 生活習慣の改善

バランスの取れた食事や適度な運動など、全身の健康維持も間接的にアレルギーリスクの低減につながります。

予防は治療よりも重要です。特に金属アレルギーの家族歴がある方は、注意が必要です。

銀歯以外の選択肢

セラミッククラウン

銀歯アレルギーのリスクを避けるため、または審美性を重視する場合、以下のような代替治療法があります:

1. セラミック治療

天然の歯に近い見た目で、金属を含まないため安全性が高い。

  • 耐久性に優れ、変色しにくい。
  • ただし、保険適用外のため費用が高くなる。

2. コンポジットレジン治療

  • 歯科用プラスチックと無機フィラーの複合材料を使用。
  • 比較的安価で、一部保険適用がある。
  • 耐久性はセラミックより劣る。

3. ジルコニア治療

  • 高強度セラミックの一種。
  • 極めて高い強度と耐久性を持つ。
  • コストが高く、主に大きな被せ物や架橋義歯に使用。

これらの代替治療法は、それぞれ長所と短所があります。患者さんの状態、予算、希望する見た目などを考慮して、最適な選択をする必要があります。

まとめ

銀歯のアレルギーの影響は口腔内にとどまらず、全身に及ぶ可能性があります。症状も様々で原因の特定が難しいこともあります。

もし銀歯のアレルギーが疑われる症状がある場合は、歯科医や皮膚科医に相談しましょう。早期発見・早期対応が、症状の軽減と健康の維持につながります。

また、予防の観点から、これから歯科治療を受ける方は、金属を含まない材料の選択肢についても歯科医師と相談することをお勧めします。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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茨木クローバー歯科・矯正歯科

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