子供の歯の矯正治療を小児矯正といいます。小児矯正には第一期治療と第二期治療に分かれており、保護者の方には少々分かりにくい仕組みになっているかもしれません。小児矯正の第一期治療について、その目的は治療方法についてご説明します。
目次
一期治療とは?
一期治療は一般的に6歳くらいから始めることが出来、子供の永久歯が生え揃うまでの治療を行います。
最近の子供はやわらかい食べ物を好むようになったせいか、顎の小さい子が多いです。顎が成長しないと永久歯が並ぶためのスペースが足りなくなって、歯がきれいに並びきらずに歯列からはみ出して重なり、デコボコの歯並びになってしまいます。
一期治療ではそれを防ぐ為に、顎の成長を促して永久歯が生えるためのスペースを整えます。顎がきちんと成長することで、永久歯が重なって生えるのを予防します。
一期治療を始める時期については子供の成長によって違いますので、矯正担当医の診断によって決定します。顎の大きさが十分に発達してもきれいに揃った歯並びにならない場合は、二期治療が必要になる場合もあります。二期治療では大人の矯正と同じ矯正装置を使い、歯並びを整えていきます。
小児矯正(一期治療)の目的とは?
小児矯正の一期治療は、主に子どもの成長過程における顎や歯の発育をサポートするための治療です。特に、永久歯が生える前の混合歯列期に、歯並びや咬み合わせの問題を早期に改善することを目指します。この時期に適切な矯正を行うことで、後々の歯列矯正がよりスムーズになり、歯の抜歯を避けることができる可能性があります。
- 骨格的な問題の解決
- 歯のスペース不足を解消
- 不正咬合の予防
一期治療の対象年齢とタイミング
第一期治療は、通常6歳から12歳の間に行われることが一般的です。この時期は、乳歯から永久歯への生え変わりが始まるため、顎の成長や歯並びを自然な形で整えることができる絶好のタイミングです。特に、以下のような兆候が見られる場合には、早めに矯正の検討が必要です。
- 上下の歯が正しく咬み合っていない
- 歯並びが非常に狭く、永久歯が正常に生えてこない
- 顎の形が左右で不均衡
一期治療のための矯正装置の種類
一期治療では、さまざまな装置が使用されます。これらの装置は、子どもの顎や歯の成長をサポートし、不正咬合や歯列の問題を早期に改善することを目的としています。
床矯正(取り外し式の装置)
床矯正装置は取り外し式で、プラスチックのプレートで出来ています。その中央にはスクリューやスプリングが付いていて、スクリューを巻いて装置の形や大きさを調整しながら、子供の顎の骨に負荷をかけてゆっくりと顎を成長させていきます。
プレオルソ(マウスピース矯正)
プレオルソは柔らかいポリウレタンでできているマウスピース型の矯正装置です。小学生の子供の場合は学校から帰ってからの1時間と、寝る時だけプレオルソをお口に入れます。学校で付けなくていいので、子供にとっての負担が少ない治療です。。
3~5歳の受け口(反対咬合)の子供の場合
受け口は早めの治療が良いとされています。小さいお子さんの場合も、装置をいれることができれば治療を開始します。
6~10歳くらいまでの子供の場合
乳歯では歯にガタガタがみられなくても、顎が小さく永久歯が生えてくる隙間がない場合は治療を開始します。
インビザラインファースト(マウスピース矯正)
インビザラインは透明なマウスピースを一定期間ごとに付け替えて歯並びを整えるマウスピース型矯正装置です。
インビザラインは主に二期治療以降の大人の矯正治療に使われていましたが、子供の混合歯列期の治療に使えるインビザラインファーストという製品が開発されました。
急速拡大装置
床矯正の装置を固定式にしたような形をしています。床矯正よりも速いスピードで子供の顎を横に広げることが出来ます。
ヘッドギア
外部から力を加えることで、上顎の成長をコントロールするために使用される装置です。特に、上顎前突(出っ歯)の治療に効果的です。
リンガルアーチ
奥歯に装着され、歯の動きを制御するための固定式装置で、下顎の歯列を整えるために使用されます。
一期治療で期待できる効果
一期治療を適切に行うことで、以下のような効果が期待できます。
- 顎の成長促進・・顎の成長を促進し、永久歯が正しい位置に生えるスペースを確保します。
- 抜歯を避ける可能性・・顎の成長をコントロールすることで、将来的に抜歯が必要なくなるケースがあります。
- 不正咬合の予防・・早期に不正咬合を改善することで、二期治療がより簡単になり、全体の治療期間が短縮されることがあります。
一期治療のメリット
乳歯から永久歯への生えかわりの時期には、一時的にすきっ歯になったり、乳歯が抜けて歯のないところが目立ったり、乳歯の後ろ側から永久歯が生えてきているのに乳歯が抜けなかったり、様々なご相談があります。
多くの場合は、経過観察を行いながら子供の顎と歯の成長を見守ります。しかし経過観察だからといって放っておくのではなく、定期的にお口の中の様子をチェックして、歯並びの治療が必要な状態になっていないか、虫歯になっていないかなどを確認することが大切です。
顎が小さく、このままでは永久歯がきれいに並びきるためのスペースが足りないと診断された場合は、小児矯正の一期治療をすることで、顎の正常な発育を促すことが出来ます。
顎が小さいままで大きくなると、歯並びはガタガタになりますし、大人になってからの成人矯正では抜歯矯正になる確率が高くなります。一期治療を受けておくと、乳歯から永久歯への生えかわり時期に合わせて顎を成長させていき、永久歯が重ならずに並ぶためのスペースを確保できます。
治療中の注意点と日常生活でのケア方法
小児矯正を進める際には、以下のような点に注意し、日常生活でのケアが重要です。
装置の正しい使用
患者さん自身で取り外しが可能な装置の場合、決められた時間しっかり装着することが大切です。患者さんが装置を正しく使うことが、治療効果を高めます。
定期健診
矯正治療中は、定期的に歯科医師の健診を受けることで、装置の調整や口腔内の健康状態をチェックします。
歯磨きを丁寧に行う
矯正装置が入っていると、歯垢が溜まりやすくなるため、毎日の丁寧な歯磨きが必要です。特に、装置の周りに歯垢がたまりやすいので、注意深くケアすることが求められます。
一期治療の後に続く治療(二期治療)について
一期治療が終了すると、永久歯が綺麗に並んで生えることの出来るスペースが確保されます。しかし、患者さんによっては引き続き二期治療が必要になる場合があります。二期治療は、永久歯が全て生え揃った時期に行われ、主に歯の位置を調整して歯並びを良くするための治療です。
- 一期治療によって歯並びや顎の成長が改善された場合、第二期治療が軽減される可能性があります。
- 二期治療では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、より精密な治療が行われます。
小児矯正(第一期治療)を治療する装置に関するQ&A
第1期治療は一般的に6歳くらいから始めることができます。子供の永久歯が生え揃うまでの治療を行います。第1期治療の時期は子供の成長によって個別に決定されます。
第1期治療のメリットは、乳歯から永久歯への生えかわりの時期において、歯並びの問題を予防・修正できる点です。顎が小さく永久歯が生えるスペースが足りない場合、一期治療を行うことで顎の正常な発育を促し、将来的な歯列の問題を防ぐことができます。
第1期治療では、子供のお口の発育状況に応じてさまざまな矯正装置が使用されます。具体的な種類としては、「床矯正(取り外し式の装置)」や「プレオルソ(マウスピース矯正)」、「インビザラインファースト(マウスピース矯正)」などがあります。
まとめ
歯並びは大人になってからの矯正治療でも治すことは可能ですが、上下左右の小臼歯を抜歯して矯正治療を行うことが多いです。小児矯正(一期治療)で子供の間に矯正治療をして顎を大きくして大人の歯が生えるスペースを作っておくと、抜歯して歯並びを整えるリスクを減らすことが出来ます。