ご自身の唾液でむせる機会が多い方もいらっしゃいます。お口をどんな状態にすればそれを減らすことが可能か、ご説明します。
目次
唾液でむせるとは?
食事中や会話中に唾液が気管に入り、突然の咳が出る経験をしたことがあると思います。これは「誤嚥」と呼ばれ、気道に異物が入ることによって引き起こされます。
特に高齢者や健康状態が低下している人は、このようなむせやすさを感じることが多いです。唾液が誤って気道に入ることで、呼吸が一時的に妨げられ、不快感や咳が誘発されます。
自分の唾液にむせる原因とは?
食べ物などをごくんと飲み込む動作を嚥下(えんげ)と専門用語で呼びます。のどには空気を肺へと取り込む気道と、噛んだ食べ物を唾液とともに胃へ運ぶ食道と二つの通り道があります。咬筋などの口の筋肉、舌、喉の筋肉など様々な筋肉を使用し、私たちは嚥下反射を行っています。
口腔内に食べ物がない場合、鼻や口から呼吸をしていますが、食べ物がある場合は、舌の奥にある喉頭蓋がしっかりと蓋をします。気道に食べ物が紛れないようにするためです。また、食べ物を飲み込む際には喉仏は上に動き、食道の入り口をより広げ、食べ物を通過しやすくする働きがあります。
何も食事をしていないのに、自分の唾液でむせることは、なるべくならば避けたいものです。ただし、この唾液でむせるということは、加齢ばかりが原因ではありません。
1. 加齢や病気による嚥下機能の低下
加齢や病気によって、喉の筋肉が弱くなり、唾液をうまく飲み込めないことがあります。
- 唾液が減ってしまった
- 噛む力が衰えてしまった
- 反射神経が鈍ってしまった
- 筋力が衰えてしまった
お口の機能が低下しているオーラルフレイルになると、噛みづらい食品が増えてしまい、食事の幅が狭まります。また、反射神経が衰えると気道に蓋をする役割の喉頭蓋の反応も遅くなり、筋力が低下すると、ごっくんと飲み込みにくく、タイミングがわからなくなります。
その他には認知症や脳卒中、薬の副作用などでむせる場合があります。
嚥下機能の低下
嚥下(えんげ)とは、食べ物や飲み物、唾液を飲み込む行為のことです。この嚥下機能が低下することは、唾液でむせる主な原因のひとつです。加齢や神経系の疾患により、喉や口周りの筋肉が弱まると、飲み込む力が低下します。結果として、唾液や食べ物が正しく食道に送られず、誤って気管に入り、むせる原因となります。特に、嚥下障害を持つ高齢者はこの問題が顕著で、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクも高まります。
嚥下機能低下の主な原因
- 加齢による筋力低下
- 脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患
- 手術後の筋肉の弱体化
- 咽喉部や食道の構造的問題
嚥下機能を改善するためには、口腔リハビリテーションや嚥下訓練などの専門的な治療が有効です。
2. 口内の乾燥
唾液は、口腔内の健康を保つために非常に重要な役割を果たしています。唾液が適量分泌されることで、食べ物が飲み込みやすくなり、むせるリスクが低くなります。しかし、口腔内が乾燥すると、唾液の流れが悪くなり、粘性が増してしまいます。これにより、唾液が気管に入りやすくなり、むせやすくなります。
乾燥の主な原因
- 加齢・・加齢に伴い唾液腺の働きが低下し、唾液の分泌量が減少します。
- 薬の副作用・・抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など、乾燥を引き起こす薬が多数あります。
- 脱水症状・・水分が不足すると、唾液の分泌量も減少します。
- 環境要因・・空気が乾燥した環境にいると、口腔内も乾燥しやすくなります。
- 口呼吸・・口で呼吸する習慣がある人は、口腔内が乾燥しやすくなります。
乾燥対策としては、こまめな水分補給や、加湿器を利用した室内環境の改善が効果的です。また、口呼吸の癖がある場合は、鼻呼吸を意識して練習することが推奨されます。
3. 姿勢が悪い
食事中や会話中の姿勢も、唾液でむせる原因となります。不自然な姿勢で食事をしたり、横になって話をすると、唾液や食べ物が気管に入りやすくなります。特に、猫背や首が前に出てしまう姿勢は、気道の通りを狭めるため、むせやすくなる傾向があります。
良い姿勢を保つ方法
- 背筋をまっすぐに伸ばし、顎を軽く引いた状態で座る。
- 食事中は椅子に座り、リラックスした姿勢で食べる。
- 会話中も正しい姿勢を意識することが大切です。
これらの対策を取り入れることで、唾液が気道に流れ込むのを防ぎ、むせるリスクを減らすことができます。
むせやすい飲食物がある
飲み込みにくい食べ物や飲み物も、唾液でむせる原因になります。たとえば、固いものや、飲み込みづらい乾いた食べ物は、口腔内に長く留まるため、誤嚥を引き起こしやすくなります。また、非常に熱い食べ物や飲み物も、飲み込む際にむせる原因となることがあります。
むせやすい飲食物の例
- クラッカーや乾パンなど、乾燥した食べ物
- 大きくて飲み込みにくい肉類や野菜
- 熱すぎるスープや飲み物
- 繊維質が多い食材(例:セロリ)
飲み物の温度にも注意が必要です。冷たすぎるか熱すぎるものは、喉に刺激を与え、むせることがあります。温度が適度で飲み込みやすいものを選ぶことで、誤嚥のリスクを減らせます。
精神的な緊張やストレス
緊張やストレスも、唾液でむせる原因のひとつです。緊張状態では、体がリラックスしておらず、喉の筋肉が強ばりやすくなります。この結果、唾液を飲み込む際にスムーズに嚥下できず、むせることが増えます。
ストレス管理の方法
- リラクゼーションや深呼吸を取り入れて、心と体をリラックスさせる。
- 緊張が続く場面では、一度ゆっくりとした呼吸を心がけ、喉や肩の力を抜くことが大切です。
唾液でむせることが頻繁に起こる場合は、これらの原因を見直し、適切な対策を取ることで、日常生活でのむせやすさを軽減することができます。
唾液でむせやすい人の特徴
むせやすい人にはいくつかの共通点があります。これらの特徴を知ることで、予防策を講じることができます。
- 高齢者・・加齢によって嚥下機能が低下しやすく、唾液でむせることが増えます。
- 口腔内が乾燥しやすい人・・乾燥によって唾液が粘性を持ちやすく、むせやすさを引き起こします。
- 姿勢が悪い人・・食事や会話中に猫背になるなどの姿勢の悪さが、気道への唾液の流れを悪くします。
唾液でむせると健康にリスクはある?
むせること自体は一時的な現象に過ぎませんが、頻繁にむせることが続く場合、以下のようなリスクや影響が考えられます。
肺炎のリスク
特に高齢者において、誤嚥性肺炎の原因となることがあります。唾液や食べ物が気道に入り、肺に感染を引き起こす場合があるため、注意が必要です。
生活の質の低下
むせることで食事や会話が楽しめなくなり、生活の質が低下することがあります。
健康への不安
むせる頻度が高まることで、体調への不安が募り、健康状態をさらに悪化させる可能性もあります。
唾液でむせるのをやめたい場合どうすればいいの?
唾液でむせない身体に改善するためには、運動を行い、正しい姿勢を保つことが大切です。筋力を鍛えるのと同様に、口や喉を鍛える運動を行いましょう。また、スマホを見る際には顔の位置を上げて見るように注意してください。
口の鍛え方の具体的な方法としては、あいうべ体操を行い、お口の周りの筋肉や舌を大きく動かします。マスク生活で口を動かす習慣が減ってきていますので、口全体をきちんと鍛えるために歌を歌うなども効果的です。
また、全体的な筋力の低下を防ぐためにも、ラジオ体操などやストレッチで体を動かしたり、偏りのない栄養の摂取できる食生活を送ることも、快適な日常を過ごすためにはポイントとなります。
- 姿勢を整える・・食事や会話中に姿勢を正し、背筋を伸ばすことが重要です。これによって唾液が気管に入るリスクを減らすことができます。
- ゆっくりと食べる・・急いで食べると、誤嚥のリスクが高まります。食事はゆっくりと、よく噛んで飲み込むことが大切です。
- 口腔内の乾燥を防ぐ・・こまめに水分を摂取し、口腔内を潤すことで唾液の流れを良好に保ちます。特に室内が乾燥しやすい季節や環境では、適切な湿度管理も有効です。
- 適切な食べ物を選ぶ・・飲み込みやすい柔らかい食べ物を選ぶことや、飲み物の温度に注意することが大切です。
こんな場合は医療機関の受診が必要
日常的にむせることが続く場合や、食事中に頻繁にむせる場合は、医師や歯科医の健診を受けることをお勧めします。以下のような症状がある場合には、早急な対応が必要です。
- むせる回数が増えている
- むせた後に咳が続く
- 胸や喉に違和感がある
- 体重が減少している
これらの症状がある場合、嚥下機能や口腔内の健康状態に問題がある可能性があるため、専門的な治療が必要です。
唾液でむせるに関するQ&A
唾液でむせる原因は主に加齢や口腔機能の低下、噛む力の衰え、唾液の減少、反射神経の鈍化、筋力の低下などが挙げられます。
唾液でむせると、誤嚥(ごえん)が起こる可能性があります。誤嚥によって唾液や食べ物が気管や肺に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。特に高齢者では肺炎が重篤な症状となることがあります。
唾液でむせるのを改善するためには、口や喉の筋肉を鍛える運動を行うことが重要です。具体的には、あいうべ体操や口の周りの筋肉を動かす運動、歌を歌うなどが効果的です。また、適切な姿勢を保ち、スマホの使用時に顔の位置を上げることも大切です。
まとめ
歯や歯肉、お口を清潔に長く健康に保つよう、当院では定期検診で、歯磨きのブラッシング指導やクリーニングを行っています。歯科医院でメインテナンスを受け、感染トラブルの少ないお口でいることが健康に繋がると考えます。また、噛み合わせや歯並びなどのお悩みがあれば、無料カウンセリングも行っていますので、クリニックでドクターやスタッフにご相談ください。