歯と口の基礎知識

夜寝る前に歯を磨いた方がいいのは何故?

夜寝る前に歯を磨いた方がいいのは何故?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

虫歯や歯周病を予防するためには歯磨きが有効です。夜寝る前の歯磨きが必要といわれる理由についてご説明します。

夜寝る前に歯磨きをする理由

1. 寝ている間は唾液の分泌が減るため

唾液は口の中の食べ者のカスや細菌を洗い流す働きをしていますが、就寝中は唾液の分泌が大幅に減少します。そのため、口の中に食べ物のカスや歯垢が残ったままだと、細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病の原因となります。寝る前にしっかり歯を磨くことで、唾液の少ない状態でも歯を守ることができます。

2. 細菌の増殖を防ぐため

就寝中は口の中が乾燥しやすく、酸性環境が長時間続くため、細菌が繁殖しやすくなります。特に、歯垢に含まれる虫歯菌が糖分を分解して酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かしてしまうため、寝る前の歯磨きが重要です。

3. 歯石の形成を防ぐため

歯垢(プラーク)が残ったままだと、唾液中のミネラルが固まって歯石が形成されます。歯石は一度つくと歯ブラシでは取り除けず、歯科でのクリーニングが必要になるため、寝る前にきちんと歯垢を取り除くことが大切です。

4. 朝の口臭予防につながる

就寝中に細菌が増殖することが、朝の口臭の原因になります。寝る前に歯を磨いて口の中を清潔に保つことで、翌朝の口臭を防ぐ効果があります。

5. 就寝前の食べ物や飲み物の影響

夜に食べた食事やお菓子、飲み物の中には糖分が多く含まれることがあり、これらが口の中に残ると、虫歯菌の餌になります。特に、糖分や酸性の飲み物(ジュースやお酒など)は、歯にとってリスクが高いので、寝る前にしっかり歯を磨くことが必要です。

6. 予防的なフッ素の効果を最大化するため

就寝前にフッ素入りの歯磨き粉を使用すると、夜間にフッ素が歯の表面に作用し、虫歯予防効果を高めることができます。寝る前の歯磨きは、フッ素が歯にしっかりと付着する良いタイミングです。

夜寝る前の歯のセルフケア

歯鏡、フロス、タフトブラシ

では、寝る前にお口の中の悪玉菌を減らすために、どうしたらいいのでしょうか?一番良いのは歯ブラシやデンタルフロスを使って歯をきれいにすることです。フッ化物入りの歯磨き粉を使用すると、虫歯のリスクを減らすことが出来ます。

歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくいところですので、フロスを通して歯垢を取り除くようにしましょう。歯垢が除去できたら、虫歯菌が栄養とする糖がない状態になりますので、虫歯菌は酸を作り出すことが出来ず、歯が溶けることもありません。

歯磨きの後は、寝る前に水以外のものを食べたり飲んだりしないように注意してください。

寝る前の歯磨きはとても大切

歯磨き

みなさんは毎日歯磨きをしておられると思いますが、寝る前に歯を磨いておられる方は
どのくらいおられるでしょうか?

「夕食後に磨いたから大丈夫」と思う方もおられるでしょう。しかし歯磨き後、寝るまでの間に水以外のものを飲んだり、何かを食べたりした時には、寝る前にも軽く歯を磨きましょう。

一日に少なくとも2回歯磨きをする、特に就寝前には必ずていねいに歯を磨く。これを習慣としていただきたいと思います。

寝ている間に口の中で起こっていること

睡眠中

歯に歯垢や食べかすが残ったままで寝てしまうと、お口の中で何が起こるでしょうか?

口の中には常在菌といって、常に細菌が居ます。それらの中には体に良い働きをしてくれる善玉菌と、虫歯や歯周病の原因となる悪玉菌、そしてどちらか優勢な方と同じ働きをする日和見菌がいます。

それらは歯垢や食べかすの中で繁殖し、夜の間にお口全体に拡がっていきます。歯ブラシやフロスを使って除去しない限り、どんどん増えていきます。

お口の中は細菌にとって最適な湿度と温度があり、特に夜間は唾液が少なくなるので唾液による抗菌作用や洗浄作用が働かず、細菌がどっと増えて歯や歯茎を攻撃します。

口腔内の悪玉菌が増えるとどんな悪い影響があるの?

虫歯や歯周病の原因となる細菌は、歯と歯の間や歯と歯茎の間に棲み着きます。

虫歯の原因菌の代表的なものはミュータンス菌です。ミュータンス菌はお口の中の糖を栄養にして酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かしていきます。

歯周病の原因菌の代表的なものは、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)、プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)、プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)、スピロヘータなどです。

それらは歯と歯茎の境目の溝で増殖して、最初は歯茎に炎症を起こします。歯肉炎が起こると、歯茎は赤くなり柔らかくふくらみます。

そして徐々に歯肉炎が悪化していくと歯周ポケットが出来、その中で細菌は更に繁殖しながら、歯と歯茎の境目をどんどん深くしていき、最後に歯を支えている歯槽骨を破壊し始めます。歯周病菌が歯槽骨に達すると、歯がグラグラし出し、やがて歯の喪失を引き起こします。

夜寝る前の歯磨きに関するQ&A

なぜ夜寝る前の歯磨きが必要とされるのですか?

夜寝る前に歯磨きをすると、口内の悪玉菌が増殖するための食べ物の残りかすや歯垢を除去できます。これにより、虫歯や歯周病のリスクが軽減します。

口腔内の悪玉菌が増えるとどのような影響が出るのですか?

悪玉菌が増えると、それらが歯のエナメル質を溶かし、虫歯を引き起こす可能性があります。また、歯と歯茎の間に悪玉菌が棲みつくと、歯茎に炎症を引き起こし、歯周病のリスクも高まります。

寝る前に口の中の悪玉菌を減らすためにはどうすれば良いですか?

寝る前に歯をきれいに磨くことが有効です。フロスを使って歯と歯の間の歯垢を取り除き、フッ化物入りの歯磨き粉を使用すると虫歯のリスクを減らすことができます。

まとめ

歯のキャラクター

夜寝る前の歯磨きの大切さがおわかりいただけたかと思います。虫歯や歯周病を防ぐためには、毎日の歯磨きの習慣がとても大切です。しかし歯周ポケットの奥は歯ブラシが届きませんし、歯石は歯ブラシで落とすことが出来ません。

そのため1年に3~4回は歯科医院の定期健診で歯科衛生士によるプロのケアを受けていただくようにおすすめします。1年に数回歯垢や歯石をしっかり落とすためのケアを受けることで、虫歯や歯周病のリスクを減らし、健康な歯や歯茎を保つことに繋がります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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