「歯の神経をとる」という言葉を聞いたことがあると思いますが、神経をとるといってもどんな治療なのかよくわからないと方も多いのではないでしょうか。神経をとる根管治療についてご説明します。
目次
根管治療とは?
根管治療とは、歯の内部にある神経や血管が感染したり炎症を起こした際に行う治療法です。歯の中心部分には「歯髄」と呼ばれる神経や血管が詰まっており、歯の健康を維持する役割を果たしています。
虫歯や外傷によってこの歯髄が傷つくと、痛みや炎症が起こって、放置すると感染が広がる場合があります。このような状態を改善するために、歯の内部の感染した歯髄を取り除いて、根管内を清潔に洗浄してから封鎖し、再び炎症が起こらないようにするのが根管治療です。
なぜ神経をとる必要があるの?
根管治療で神経をとる理由は、主に以下の3つです。
感染を抑えるため
虫歯が進行し、歯髄まで達すると炎症が起こります。この炎症が進行すると、歯髄内の神経や血管が感染し、周囲の骨や歯茎にまで広がる可能性があります。この感染を抑えるためには、感染した歯髄を取り除く必要があります。
痛みを取り除くため
歯髄が感染すると、激しい痛みを伴うことが多く、特に温かい飲み物や食べ物を摂取した際に痛みが強まります。神経をとることで、痛みの原因となる炎症や感染を取り除くことができ、患者さんの苦痛を和らげます。
歯を保存するため
歯髄が感染したまま放置すると、最終的には歯を失うリスクが高まります。根管治療によって神経を除去し、感染を食い止めることで歯を長期間保存することができます。
神経をとることにメリットはある?
神経をとることで患者さんが得られるメリットは次のとおりです。
1. 痛みを根本的になくす
根管治療を行うことで、痛みの原因である炎症や感染を取り除くため、長期的な痛みから解放されます。
神経をとることで、歯の内部にある炎症や感染の原因を物理的に除去できます。歯髄は、歯の中で痛みを感じる神経が集まる場所で、虫歯が深く進行して歯髄に達すると、非常に強い痛みが生じます。
この痛みは、温かい飲み物や食べ物に触れたときにさらに悪化することが多いです。神経を除去することで、この痛みを根本的に取り除くことができ、患者さんは快適な生活を取り戻すことができます。
特に、夜間に痛みが強まることが多い歯髄炎に悩む患者さんにとって、治療後、痛みが急速に改善されるため、生活の質が大きく向上します。
2. 歯を抜かずに済む
神経がダメージを受けても、根管治療を行うことで歯を抜かずに維持することが可能です。特に前歯など見た目に影響を与える部分では大きなメリットとなります。
歯髄が感染したまま放置すると、最終的には抜歯が必要になることがあります。特に、前歯や奥歯など、咀嚼や発音に関与する重要な歯を失うと、食事や日常生活に大きな影響が出る可能性があります。神経を取って適切な処置を施すことによって、歯を抜かずに済みます。
抜歯を避けることで、見た目の変化や入れ歯、インプラントなどの代替治療を行う必要もなくなり、長期的な歯の健康を保つことができます。
3. 炎症や膿の発生を防ぐ
歯髄に感染が広がると、根の先端に膿がたまり、顎骨や歯茎に腫れや痛みを引き起こして、重症化すると顔全体が腫れるケースもあります。神経を除去し、感染部分をしっかりと除去することで、膿瘍の再発を防ぎ、健康な口腔内環境を保つことが出来ます。
膿がたまると口臭や不快感を引き起こすため、早期に根管治療を行うことで、こうした問題も解消されます。
3. 再感染を防ぐ
神経を取り除き、根管内を清潔に保つことで再び感染が広がるリスクを最小限に抑えることができます。
虫歯や外傷によって歯髄が感染すると、その感染は歯の根の先まで進行する可能性があります。感染が根の先に広がると、歯周組織や顎の骨にまで炎症が波及し、重度の痛みや腫れ、さらには膿がたまる「根尖性歯周炎」などの症状が現れることがあります。これを放置すると、骨が破壊されて歯を失うリスクが高まります。
神経をとることで、感染源そのものを除去し、周囲の組織への感染拡大を防ぐことができます。
歯の神経をとるのはどういう処置?
虫歯の痛みは、最近が出す酸によってエナメル質が溶かされ、次に内部の象牙質が溶かされ、虫歯が歯髄にまで達した場合に起こります。そのまま治療せずにいると細菌の感染はあごの骨にも広がってしまう可能性もあるため、細菌に感染した神経をとり、薬を詰める治療をしなければなりません。この治療を根管治療といいます。
根幹治療は細菌の歯髄への感染程度によって抜髄(ばつずい)と感染根管治療に分けられます。
抜髄
虫歯が歯髄まで進行していて痛みが起きているときに、麻酔をして歯髄を取り除きます。抜髄の処置を行うと虫歯の痛みは消えます。
感染根管治療
虫歯によって歯髄が感染壊死していたり、根管充填が十分に行われていなかったために根管内が感染したり、根尖病巣といって歯根に膿がたまったりした場合に行う処置です。
歯の神経ってどうなっているの?
歯の一番外側は硬いエナメル質で覆われています。エナメル質は人間の身体の中で最も硬いといわれますが、その内部の象牙質(ぞうげしつ)はそれほどの硬さがありません。象牙質の内側は歯髄(しずい)と呼ばれ、毛細血管や神経で構成されています。歯の神経とは、この歯髄のことをいいます。
神経をとるとどうなる?
神経をとると虫歯の痛みは感じなくなりますが、様々な影響が出ます。
- 歯髄をとってしまうと、歯に血液などによる栄養がいかなくなり、白血球もいなくなるため感染に弱く、物理的にも象牙質の弾力性がなくなり、折れやすくなる
- 神経をとったことで痛みを感じなくなりますので、虫歯に感染したときの発見が遅れることがあります。
- 歯が変色することがある
- 根管治療がうまくいかなかった場合に、再び細菌に感染することがある
根管治療の手順
虫歯の治療における根管治療の手順についてご説明します。
- 虫歯に侵されている部分を削り取る
- 歯髄を除去する
- 根管内を薬液で洗浄する
- 根管内に薬を入れて仮のふたをして数日おく
- 根管内を消毒してゴムのようなものを詰め込む
- レントゲン撮影をして根管治療がうまくいったかを確認する
根管治療後のリスクと注意点
根管治療には多くのメリットがありますが、いくつかのリスクや注意点も存在します。
再感染のリスク
根管治療後も再感染のリスクはゼロではありません。特に、治療が不完全だった場合や、詰め物が劣化した場合には感染が再発することがあります。そのため、歯科医での定期的なチェックは欠かせません。
歯が脆くなる可能性
神経を除去することで、歯は栄養供給が絶たれ、脆くなる可能性があります。そのため、クラウンや詰め物で補強することが一般的です。
治療後の痛みや不快感
根管治療後、数日間は軽い痛みや不快感を感じることがあります。これは一時的なもので、痛み止めなどで対処できることがほとんどです。
根管治療で神経をとるに関するQ&A
歯の神経をとる処置は根管治療と呼ばれます。虫歯の進行により、細菌感染が歯髄に及んだ場合に行われます。治療の過程で感染した神経を取り除き、根管内を消毒し、薬を詰めて歯の保存を図ります。
神経をとると、虫歯の痛みは消えますが、いくつかの影響があります。歯髄がなくなるため歯の栄養供給が滞り、感染に弱くなります。また、痛みを感じなくなるため、虫歯の発見が遅れる可能性があります。歯の変色や根管治療の失敗による再感染も起こり得ます。
根管治療の手順は以下の通りです。
1. 虫歯に侵された部分を削り取る。
2. 歯髄を除去する。
3. 根管内を薬液で洗浄する。
4. 根管内に薬を入れて仮のふたをし、数日間おく。
5. 根管内を消毒し、ゴムのような充填物を詰め込む。
6. レントゲン撮影で治療の成果を確認する。
まとめ
根管治療はかなりの精密さが求められる治療です。また、神経をとることのデメリットもたくさんありますので、なるべく虫歯や歯周病にならないように、毎日の歯磨きや定期健診を生活の中に取り入れていただきたいと思います。