歯医者で泣いている子供は、珍しくありません。子供の身になってみれば、歯医者が怖いのも仕方ないかとも思えます。それに、大人にも歯医者恐怖症の人が大勢おられます。歯医者で大泣きしてしまう子供への口腔ケアについてご説明します。
子供が歯医者で大泣きする理由とは?
子供が歯医者さんで大泣きしてしまう原因には、さまざまな理由があります。その理由を理解することで、どのように対処すべきかが見えてきます。
恐怖心
歯医者の器具や治療音は、子供にとって普段の生活の中で見たり聞いたりしないため、怖く感じるものです。
過去の経験
過去に歯医者で痛かった経験があると、それがトラウマとなってしまい、歯医者は痛い所と思い込んでいる場合があります。
見知らぬ環境
歯医者の雰囲気や匂いなど、普段と異なる環境に対して子供は敏感に反応し、緊張して不安になります。
親の影響
親が歯医者に対して不安を感じていたり、子供が泣くのではないかとハラハラして緊張していると、その気持ちが子供にも伝わることがあります。
これらの理由が組み合わさり、子供が大泣きしてしまうことがよくあります。まずは、なぜ泣いてしまうのか、その背景を理解することが大切です。
歯医者で泣てしまう子供へのケア
子供が歯医者さんで泣いてしまった場合、次のような対処法が効果的です。
1. 落ち着かせるように言葉をかける
優しく話しかけ、安心感を与えるようにしましょう。「怖くないよ」「すぐ終わるからね」といった声かけが有効です。
2. お気に入りのアイテムを持たせる
お気に入りのぬいぐるみやおもちゃを持参させることで、子供に安心感を与えることができます。
3. 歯医者さんとの信頼関係を築く
治療の前に、歯医者さんと短い対話をさせることで、子供が安心することがあります。名前を呼んでもらったり、簡単な質問をしてもらうことで、信頼関係が生まれます。
歯医者に連れてこられて、子供は最初は泣いてしまうかもしれません。しかし子どもは環境への順応が早く、何度も通うことで歯医者に慣れてくれます。虫歯治療などで痛い思いをしなければ、あまり嫌がらない子が多いです。
子供に泣かれることに抵抗のある方も多いですが、歯医者では最初は泣いてもいいのです。子供が大声で泣いても、お母さんは恥ずかしいと思わなくても大丈夫ですし、子供を叱る必要もありません。
歯医者とはそうした場所だと割り切って、すべてを歯科医師や歯科衛生士などのスタッフに任せて下さい。
子供の中には、小さくても泣かずに健診を受けられる子もいます。そんな子は、家庭での歯ブラシがよく出来ている子です。横になって口を開けることに慣れている子は、歯医者でも同じようにできます。
かといって、泣いている子はみんな家庭での歯磨きが出来ていないということはありません。どうか、子供を責めたり、叱ったりしないでください。もちろんお母さんのせいでもありません。
歯医者は怖くも痛くもなく、むしろ歯をきれいにしてもらえる気持ちのいい場所だと、子供に認識してもらえるように、私たちもがんばります。
事前にできる準備と心構え
歯医者に行く前に、子供が歯医者で泣かないようにするための準備をしておくことが大切です。
1. 家で練習しておく
歯医者さんに行く前に、家で「歯医者ごっこ」をして治療の流れを練習してみると良いでしょう。口を開ける練習をしたり、ライトで歯を見せる遊びを通して、実際の診察に備えることができます。
2. ポジティブな言葉を使う
歯医者に行く前から「痛いよ」「怖いよ」などのネガティブな表現を避け、むしろ「先生が歯をきれいにしてくれるよ」などのポジティブな言葉を使いましょう。
3. 褒めてあげる
歯医者さんに行くという行為自体を褒めてあげましょう。「頑張ったね!」「偉かったね!」という言葉は、次回の健診へのモチベーションにつながります。
もし治療が必要になった時には無痛治療
もし子供に虫歯が見つかって、削らなければならなくなっても、ご安心下さい。当院では、無痛治療といって、患者さんに痛みを感じさせないことに重点を置いた歯科治療を行っています。
子供に対して行うことの出来るのは、「笑気麻酔」です。笑気麻酔は鼻から吸っていただくタイプの麻酔で、患者さんは軽いうたた寝をしているような感じになります。周囲の声などは聞こえているのですが、リラックスして、ぼんやりとした感じです。
その状態で、痛みが起こりそうな場合には局所麻酔もして治療をしますので、患者さんは痛くない状態で、緊張もせずに治療を終えることが出来ます。
笑気麻酔には「何歳にならないと使えない」という決まりはありません。しかし泣いてしまうと鼻が詰まってしまい、鼻から笑気を吸うことができなくなりますので、笑気麻酔の前に子供が泣いてしまわないように気をつけています。
大人の方でも歯科恐怖症の方は笑気麻酔を希望されます。笑気麻酔は保険がききますので、ご希望の方は歯科医師にお申し出下さい。
幼児期の口腔ケアについて
1歳半以降からは、定期的に子供を歯医者に連れて行って健診を受けること望ましいです。
定期検診は3~4ヶ月に1回のタイミングで、お母さんも一緒に受けていただくのがベストです。その時にフッ素も塗ってもらいましょう。
大切なのはご家庭での口腔ケアです。子供が歯磨きが嫌いになったり、面倒なものだと認識しないように、ビデオを見ながら、またはお母さんが歌を歌ってあげながらなど、遊びを加えて、歯磨きを習慣づけてあげましょう。
そして、子供が小さい間は、お母さんによる仕上げ磨きが重要です。歯を触られることに慣れている子供は、歯医者での検診時に泣いてしまう子が比較的少ないです。
お母さんは毎日お忙しいことでしょうが、子供の歯の仕上げ磨きだけは、しっかりと行っていただきたいと思います。
子供が歯医者で大泣きするに関するQ&A
子供が歯医者で泣く理由は様々ですが、主に不安や怖さからです。初めての環境や知らない人に触られることへの恐怖が強く影響します。
定期的な歯医者への訪問は、早期に歯科問題を見つけて対処するために重要です。また、これにより子供は歯医者に慣れ、訪問が恐怖につながることが少なくなります。
親は、子供が歯医者で泣いても恥ずかしく思う必要はないと理解することが大切です。その代わりに、専門家に任せ、子供が慣れるのを待つことが推奨されます。
まとめ
子供は一人ひとり性格が違っていて、怖がりだったり、人見知りだったり、何に不安を感じるかはそれぞれ違います。ですから、それをとがめる必要はありません。
いつもと違う場所に連れてこられて、一人だけで診療チェアに座らされて、知らない人に取り囲まれるとしたら、怖いと感じて泣いてしまっても、仕方がないのです。
歯科医院側でも、子供がリラックスできるように色々な工夫をしていますので、子供が泣いてしまっても、お母さんは落ち着いて、いつも通りにしていて下さいね。
子どもが歯医者で大泣きする場合、歯科恐怖症と不安の管理が重要です。歯科恐怖症と不安は子どもたちに一般的であり、臨床的および心理社会的な影響をもたらすことがあります。歯科恐怖症の評価は、その管理において重要なステップです。自己報告尺度を使用することで、子どもたちの恐怖症を評価することができます。【Morgan, 2017】
また、一般歯科医と小児歯科医の間で、若い患者の歯科不安の管理方法に違いがあります。小児歯科医は、より広範囲の管理技術を適用し、より頻繁に心理療法的介入と不安評価尺度を使用します。継続教育コースに頻繁に参加する歯科医は、治療をより困難でないと判断し、心理療法的介入もより頻繁に使用します。【Diercke et al., 2012】
したがって、子どもが歯医者で大泣きする場合の改善策としては、次のようなアプローチが有効です。
1. 歯科恐怖症の評価を行い、子どもの不安の原因を特定します。
2. 心理療法的介入や、子どもにとって理解しやすい情報提供を行います。
3. 子どもが安心して治療を受けられるように、歯科医との良好な関係を築きます。
これらのアプローチにより、子どもの歯科恐怖症や不安を軽減し、歯科治療への協力的な態度を促すことができます。