審美歯科で代表的な治療といえばセラミックでの被せ物です。通常の歯や口元の機能を回復するための治療に加え、見た目の美しさを改善するために行う審美治療についてご説明します。
審美歯科とは
審美歯科はエステティック・デンティストリーと呼ばれ、歯や歯並び、歯茎のラインなどの美しさに焦点を当てた総合的な歯科治療のことです。
現代では歯の治療は単に噛めるようにするだけでなく、見た目をより綺麗にすることが求められます。噛むためという目的なら、保険診療で十分なのですが、保険診療の限られた治療法や材料では仕上がりに満足できない方のために、より良い材料を使って自然な美しい口元にする治療が、審美歯科です。
お口の機能は噛むだけではありません。人とのコミュニケーションのためには喋ることが必要ですし、笑顔が美しいことも大変重要です。これらのコミュニケーションに歯は大きく関わっており、審美歯科では、より見た目を美しく、快適に過ごせるように歯を整えていくということに重点を置いています。
セラミック治療
審美歯科の代表的な治療はセラミック治療です。虫歯で大きく歯を削らなければならなかった時や、歯並びや歯の形が悪い時、歯が黒ずんだりして変色した時に、セラミックで作られた被せ物(クラウン)を被せます。差し歯とも呼ばれます。
セラミックは隣の天然歯とほぼ同じ自然な色調に仕上げることが出来るため、特に前歯の治療で威力を発揮します。セラミックの詰め物・被せ物は、保健治療で使われるレジンや金属とは違い、歯との間に段差ができにくく、そこから虫歯になるリスクも少ないです。
セラミックの種類
セラミックの被せ物には主に3種類の素材があります。
- オールセラミック
- ハイブリッドセラミック
- ジルコニアクラウン
オールセラミック
オールセラミックはすべてセラミックで出来ているため、天然歯にそっくりな透明感のある自然な色調の美しい被せ物が作れます。金属を使用していませんので、金属アレルギーのある方でも使えます。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックはセラミックとプラスチックを混ぜ合わせた素材で、オールセラミックよりは値段が安いものの、天然歯と比べた場合の質感はやや劣ります。
ハイブリッドセラミックは材料にプラスチックを含んでいるので歯磨き剤や歯ブラシによって表面に細かい傷がつきやすく、その部分に着色汚れや歯垢が表面につきやすいというデメリットがあります。ハイブリッドセラミックは歯科医院によっては取り扱っていない場合もありますので、お問合せ下さい。
ジルコニアクラウン
ジルコニアを使用したクラウンは大変硬い材質で、強度と耐久性に優れています。奥歯に使用すると硬すぎるため、主に前歯に使われます。
歯のセラミック治療は、美観と機能性の両方を兼ね備えた治療法として広く利用されています。以下にメリットとデメリットを挙げます。
セラミックのメリット・デメリット
メリット
1. 審美性
- セラミックは天然の歯に非常に近い色や透明感を持っており、自然な仕上がりが期待できます。
- 変色しにくいため、長期間美しい状態を保つことができます。
2. 耐久性
- セラミックは非常に硬く、長期間の使用に耐えうる素材です。
- 耐磨耗性が高く、噛み合わせの強い力にも耐えられます。
3. 生体適合性
- セラミックは生体適合性が高く、金属アレルギーの心配がありません。
- 歯肉に対しても優しいため、炎症を引き起こしにくいです。
4. 保険適用
- 一部のセラミック治療は保険適用が可能で、比較的安価に治療を受けられる場合があります(地域や国による)。
デメリット
1. コスト
- 高品質なセラミック治療は比較的高額になることが多いです。特に保険が適用されない場合は、費用が大きな負担となることがあります。
2. 施術の複雑さ
- セラミックの装着には高い技術が求められ、熟練した歯科医師が必要です。
- 治療過程が複雑であり、複数回の通院が必要となることがあります。
3. 脆さ
- 非常に硬い反面、セラミックは強い衝撃に弱く、割れることがあります。特に歯ぎしりや食いしばりが強い人は注意が必要です。
4. 調整が難しい
- セラミックは硬いため、装着後の微調整が難しいことがあります。そのため、初期の段階での精密な調整が求められます。
ラミネートベニア
ラミネートベニアは前歯に行う審美治療で、歯の表面を削って薄いセラミックを貼り付けることで見た目を美しくします。神経を抜いた歯はホワイトニングの効果が出にくく、ある種の薬剤による歯の着色も、ホワイトニングでは白くなりません。そのような場合にはラミネートベニアがおすすめです。
ラミネートベニアを接着する前には歯を削りますが、被せ物の治療と比べるとわずかな量ですので、歯を傷めることが少なく、短期間で治療が終わります。
頑固な着色汚れのクリーニング
通常のクリーニングは保険適用となりますが、タバコのヤニによる着色がひどい場合は、自費診療で時間をかけてクリーニングを行います。
1~2回自費治療のクリーニングを受けていただいた後は、3ヶ月に1回程度の定期健診を受けていただくと、歯の自然な色をキープすることができます。
審美歯科は贅沢な治療?
日本では、「国民医療保険で受けられる治療が十分な水準の治療」という考え方が何十年も続いています。国民医療保険制度(国民皆保険制度といいます)がカバーしている治療をすれば十分であり、それ以上に歯を美しく治す治療は贅沢だという感覚が一部の患者さんの中にあるように思われます。
しかし現在の保険治療では、治療内容や使える材料に、世界的な歯科医療レベルからみても後れをとっている部分があることは否めません。本来の歯科治療とは、お口の状態を健康に保つためであると同時に、見た目の美しさや豊かな表情を回復するためのものでもあることを考えれば、審美歯科は特別贅沢な治療というわけではありません。
審美歯科とセラミック治療に関するQ&A
審美歯科はエステティック・デンティストリーと呼ばれ、歯や歯並び、歯茎の美しさに焦点を当てた総合的な歯科治療のことです。保険診療では満足できない方のために、より良い材料を使って自然な美しい口元にする治療が行われます。
セラミック治療は審美歯科の代表的な治療方法で、虫歯で大きく歯を削る必要がある場合や歯の形や色が気になる場合に、セラミックで作られた被せ物(クラウン)を歯に被せる治療です。セラミックは天然歯に近い色調を持ち、美しい見た目を実現します。
ラミネートベニアは前歯の審美治療で、歯の表面を削って薄いセラミックを貼り付けることで見た目を美しくします。神経を抜いた歯や着色が難しい歯に対して、ホワイトニングではなくラミネートベニアが適しています。
まとめ
一般的に審美歯科とは、歯や口元の美しさを最大限に追求するための総合的な歯科治療のことをいいます。今後の歯科治療全体の精度やクオリティが上がるにつれ、審美歯科が全ての歯科医療で求められていく分野になることは間違いありません。
歯を美しく保つという意識をもつことによって歯が痛くなるまで治療せずに我慢するということがなくなれば、被せ物や抜歯をすることも減り、最終的には治療費の抑制にも繋がっていくことでしょう。