
「インプラント治療に興味があるけれど、リスクが心配…」と思われている方もおられるのではないでしょうか?インプラントは適切な知識を持たずに進めるとトラブルにつながる可能性もあります。インプラント治療のリスクとその対策、安全に治療を受けるためのポイントをご説明します。
インプラント治療の主なリスクとは?
インプラント治療には、他の歯科治療とは異なるリスクがいくつかあります。以下の点を理解し、事前に備えることが大切です。
1. インプラントの失敗リスク
インプラントが骨と結合せず、脱落してしまうケースもあります。その原因としては以下のようなものが考えられます。
主な原因
- 骨の量が不足している・・顎の骨が十分でないと、インプラントがしっかりと固定されません。
- 喫煙習慣・・タバコに含まれる有害物質が血流を悪化させ、骨とインプラントの結合を妨げます。
- 過度な力がかかる・・歯ぎしりや食いしばりの習慣があると、インプラントに強い力がかかり、定着しづらくなります。
対策
- 事前のCT検査で骨量をチェックし、必要に応じて骨造成を行う。
→ 骨が不足している場合は「骨移植」や「サイナスリフト」などの処置が可能です。特に上顎は骨の厚みが不足しがちなので、事前の診断が大切です。 - 喫煙習慣のある方は、治療前後で禁煙をする。
→ 喫煙は骨の血流を悪化させるため、手術の1か月前から禁煙し、手術後も最低3か月は控えることが推奨されます。 - 歯ぎしりのある方は、ナイトガード(マウスピース)を使用する。
→ ナイトガードを装着することで、就寝中の過度な負荷を軽減し、インプラントへのダメージを防ぐことができます。
解説
インプラント治療の成功率は高いですが、事前の診断と適切な準備がなければ、失敗のリスクは高まります。特に骨の状態が悪い方や、歯ぎしりの習慣がある方は、治療前に専門医としっかり相談し、必要な対策をとることが重要です。
喫煙習慣のある方は「どうしても禁煙が難しい…」ということもあるかもしれませんが、せっかく高額な治療を受けるのですから、できる限り禁煙を心がけることが成功への近道です。
2. 感染症のリスク
インプラントは外科手術を伴うため、感染症が発生することもあります。特にインプラント周囲炎と呼ばれる炎症が起こると、最悪の場合インプラントが脱落してしまうこともあります。
感染の主な原因
- 口腔内の清掃不足:歯磨きが不十分だと、細菌が増殖しやすくなります。
- 免疫力の低下:糖尿病や高血圧の方は免疫力が低下し、感染しやすい状態になります。
- 手術時の衛生管理不足:器具や手技の管理が適切でないと、細菌感染のリスクが高まります。
対策
- インプラント周囲の歯磨きを徹底する(専用の歯ブラシやフロスを活用)。
→ インプラント専用の歯ブラシや、歯間ブラシを使うことで清掃効果を高められます。 - 糖尿病などの持病がある方は、医師と相談して体調管理を行う。
→ 血糖値が高いと傷の治りが遅くなるため、治療前にしっかりと管理することが大切です。 - 信頼できる歯科医院を選び、清潔な環境で手術を受ける。
→ 最新の滅菌設備を備えたクリニックを選び、手術環境にも注意を払いましょう。
解説
インプラント周囲炎は、手術後のケア次第で防げるリスクです。また、糖尿病をお持ちの方は、「私にはインプラントは無理なのでは?」と思われるかもしれませんが、適切な血糖コントロールを行えば、問題なく治療を受けられるケースも多いです。担当の歯科医師としっかり相談し、最適なプランを立てることが大切です。
3. 神経や血管を損傷するリスク
インプラントを埋め込む際に、神経や血管を傷つけてしまうリスクも考えられます。特に下顎には大きな神経が通っているため、誤った位置に埋入すると、しびれや痛みを引き起こすこともあります。
損傷の主な原因
- 事前の診断不足・・CT撮影をせずに手術を行うと、神経の位置を正確に把握できない。
- 埋入位置のミス・・経験の浅い医師が行うと、埋入位置がずれてしまう可能性がある。
対策
- 事前にCT撮影を行い、神経や血管の位置を確認する。
→ 2次元のレントゲンではなく、3DのCTスキャンを使用することで、神経の位置を正確に把握できます。 - コンピューターガイドを活用した正確な埋入計画を立てる。
→ 「ガイドサージェリー」と呼ばれる方法では、コンピューターで精密にシミュレーションし、誤差を最小限に抑えた手術が可能です。 - 経験豊富な歯科医師を選ぶ。
→ インプラントの埋入には、歯科医師の経験や技術が大きく影響します。年間の埋入本数や、学会資格の有無をチェックするのも一つの方法です。
解説
インプラント治療では、神経や血管を傷つけないことが最も重要です。
神経損傷が起こると、術後に持続的なしびれが残ることがあり、数ヶ月〜数年にわたって回復しないケースもあります。
「安いから」「近いから」という理由だけでクリニックを選ぶのではなく、CT診断があるか?埋入実績は十分か? などのチェックを忘れないようにしましょう。
4. 金属アレルギーのリスク
インプラントはチタン製ですが、まれに金属アレルギーを引き起こすことがあります。特に、過去に金属アレルギーを経験した方は注意が必要です。
金属アレルギーの主な原因
- 過去に金属アレルギーを発症したことがある。
- 体質的に金属アレルギーを起こしやすい。
- インプラントの表面処理の違いによって、体に合わないことがある。
対策
- 事前に金属アレルギー検査を受ける。
→ 皮膚科やアレルギー専門の医療機関で「パッチテスト」を受け、チタンへのアレルギー反応を確認できます。 - 金属を使用しない「ジルコニアインプラント」を選択する。
→ ジルコニア製のインプラントは、金属アレルギーが気になる方に適した選択肢です。審美性も高く、変色しにくいメリットがあります。 - 医師と相談し、体に合ったインプラントを選ぶ。
→ 歯科医院によって取り扱っているインプラントの種類が異なるため、金属アレルギーの心配がある場合は、事前に相談しましょう。
解説
金属アレルギーはある日突然発症することもあるため、「今まで大丈夫だったから」と安心できるものではありません。「インプラントを埋めた後にアレルギー反応が出てしまったらどうしよう…」と不安な方は、事前に検査を受けることで安心できます。
また、金属アレルギーが心配な方には、チタンではなく「ジルコニアインプラント」という選択肢があることも知っておくと良いですね。
5. 治療費が高額になるリスク
インプラントは保険適用外の治療が多く、費用負担が大きい点もデメリットです。治療費を安く済ませようとすると、質の低い治療を受けてしまうリスクもあります。
治療費が高額になる主な理由
- 自由診療であるため、保険適用外。
- 使用するインプラントの種類や本数によって費用が変動。
- 骨造成や追加手術が必要になると、費用がさらにかかる。
対策
- 治療費だけでなく、歯科医院の技術や実績を考慮して選ぶ。
→ 「安さだけで決める」と、経験不足の医師にあたってしまう可能性があり、結果的に再治療が必要になって余計に費用がかかることもあります。 - 費用の内訳をしっかり確認する。
→ 「インプラント本体の費用」だけでなく、「手術費用」「上部構造(被せ物)」など、トータルの費用を事前に把握することが重要です。 - 医療ローンや分割払いを活用する。
→ 一括払いが難しい場合は、医療ローンを利用することで月々の負担を軽減できます。
解説
インプラントは決して安い治療ではありませんが、長期的に見れば入れ歯やブリッジよりもコストパフォーマンスが良いケースもあります。例えば、入れ歯は定期的な修理や交換が必要ですが、インプラントは適切なケアをすれば20年以上使用できることが多いため、結果的に費用対効果が良くなる場合もあります。
また、「高額な治療だからこそ、安さだけで決めないこと」が重要です。実績や設備の整ったクリニックを選ぶことで、安全で確実な治療を受けられます。
まとめ
インプラント治療にはいくつかのリスクがありますが、事前にリスクを知り、適切な対策を講じることで安全に治療を受けることが可能です。
歯磨きを徹底し、感染を防ぐ
CT撮影を行い、神経や血管を避ける
金属アレルギーがないか確認する
信頼できる歯科医院を選ぶ
インプラント治療を検討されている方は、まずは信頼できる歯科医院で相談してみてくださいね。適切な対策をとれば、リスクを最小限に抑え、安全に治療を進めることができます。