マウスピース矯正は治療中に痛みを感じることがあり、そのタイミングや原因を理解しておくことは、安心して治療を進める上で重要です。マウスピース矯正中に痛みを感じる主なタイミングとその対処法をご説明します。
マウスピース矯正の基本的な仕組み
マウスピース矯正は、患者さんお一人おひとりの歯並びに合わせて作成された透明なマウスピースを装着し、段階的に歯を移動させる治療法です。通常、1週間~10日程度で新しいマウスピースに交換し、少しずつ歯を理想的な位置へと導きます。
この方法は、従来のワイヤー矯正と比較して目立ちにくく、取り外しが出来るため、食事や歯磨きの時には外して普段通り行えます。
痛みを感じる主なタイミング
マウスピース矯正中の痛みは、その発生するタイミングや状況によって異なります。
1. 新しいマウスピースへの交換時
新しいマウスピースは、歯を次の段階の位置に動かすために少し歯の位置を移動させた形に作られています。このため、装着直後から数日は歯に圧力がかかり、痛みや違和感を感じることがあります。順調に歯が動くと、次のマウスピースへ交換する前日には、全く痛みや違和感を感じなくなります。
- 痛みの強さ・・個人差がありますが、最初の24~48時間が特に痛みを感じやすい時期です。
- 痛みの場所・・主に歯の根元や周囲の歯茎部分に鈍い痛みを感じることが多いです。
- アドバイス・・痛みが気になる場合、鎮痛剤の服用や柔らかい食事を心がけるとよいでしょう。
2. アタッチメントの装着時
アタッチメントは、小さな突起物を歯の表面に付けることで、マウスピースがしっかりと歯にフィットし、効率よく歯を動かすための重要な役割を果たします。ただし、以下の場面で痛みを感じることがあります。
- 装着直後・・アタッチメント自体が唇の裏側などに当たって違和感を引き起こすことがあります。
- マウスピースの着脱時・・アタッチメントが引っかかる感覚により、特に最初の数日は痛みを伴うことがあります。
- アドバイス・・マウスピースの着脱には、指先の力をうまく使い、無理に外そうとしないよう注意してください。
3. ゴムかけをしたとき
矯正用ゴム(エラスティック)は、歯の上下や斜め方向の移動を助けるために使われます。このゴムを初めて使用した際や、ゴムのサイズや強さが変更されたときに痛みを感じる場合があります。
- 痛みの強さ・・ゴムのかけ方や力のかかり具合により異なります。初期は強く感じることがありますが、数日で慣れることが多いです。
- 痛みの場所・・ゴムがかかる歯やその周辺に圧迫感や軽い痛みを感じることがあります。
- アドバイス・・ゴムの装着に慣れるため、指示された通りに正確に装着を続けることが大切です。
4. 食事中や咀嚼時
マウスピース矯正中の歯は、常に動いているため敏感になりがちです。そのため、咀嚼時に痛みを感じることがあります。
- 硬い食べ物が原因・・ナッツやクラッカーなどの硬い食品は、歯に過剰な負担をかけることがあり、痛みを引き起こします。
- 歯茎の刺激・・食事中に歯茎が刺激を受けると、痛みや不快感を伴うことがあります。
- アドバイス・・矯正中は柔らかい食品を選ぶことをおすすめします。硬い食品を食べる際は、小さく切って咀嚼回数を増やすことで痛みを軽減できます。
5. 長時間の装着後
マウスピースを装着し続けることで、歯や歯茎に長時間圧力がかかり、痛みや疲労感を感じることがあります。
- 取り外し時の痛み・・長時間装着後に取り外す際、圧力の変化により軽い痛みを感じる場合があります。
- 歯の疲労感・・長時間にわたり同じ圧力がかかることで、歯自体に疲労を感じることがあります。
- アドバイス・・装着時間は歯科医師の指示に従いつつ、適宜休憩を挟むことで歯や歯茎への負担を軽減できます。
痛みを感じるタイミングは患者さんごとに異なりますが、ほとんどの場合は一時的なもので、数日以内に軽減します。ただし、痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合や、1週間以上続く場合は歯科医師に相談することをおすすめします。
痛みの原因とそのメカニズム
マウスピース矯正中の痛みの主な原因は、歯を新しい位置へ移動させるためにマウスピースによって生じる圧力です。歯が動く時に、周囲の骨や組織が再構築される過程で痛みが出ます。また、アタッチメントや矯正用ゴムの使用により、歯や歯茎に追加の圧力がかかることも痛みの原因となります。
痛みを軽減するための対処法
痛みを軽減するための方法として、以下の対処法があります。
鎮痛剤の服用
市販の鎮痛剤を服用することで、一時的に痛みを和らげることができます。ただし、服用前には歯科医師に相談してください。
柔らかい食事の摂取
硬い食べ物は避け、スープやおかゆなどの柔らかい食事を選ぶことで、咀嚼時の痛みを軽減できます。
マウスピースを正しく装着する
マウスピースが正しく装着されているか確認し、うまくはまらない場合や歯茎に当たって痛い部分がある時は歯科医師に調整を依頼してください。
お口の中を清潔に保つ
歯磨きやデンタルフロスを使ってお口の中を清潔に保つことで、炎症や痛みの予防につながります。
痛みを予防するためのポイント
痛みを予防するためには、以下の点に注意してください。
装着時間を守る
歯科医師の指示に従い、1日22時間以上の装着を守ることで、計画的な歯の移動が可能となり、痛みの軽減につながります
新しいマウスピースへのスムーズな移行
交換直後の痛みを和らげるために、新しいマウスピースを装着する際は、就寝前に行うとよいでしょう。睡眠中に痛みを感じにくくなり、朝起きた頃には痛みが軽減していることが多いです。
定期的な健診
健診を受けることで、装置の不具合や痛みの原因を早期に発見し、適切な処置を行えます。また、虫歯や歯周病のチェック、歯のクリーニングを受けることが出来ます。
無理のない食生活
硬いものや粘着性のある食品は避け、矯正中の歯に過度な負担をかけないように注意してください。
痛みが続く場合の対策
通常、マウスピース矯正中の痛みは一時的なものですが、以下のような場合には注意が必要です。
痛みが長期間続く場合
新しいマウスピースに交換して数日以上経過しても痛みが続く場合は、マウスピースの適合が悪い可能性があります。歯科医師に相談して調整を依頼しましょう。
激しい痛みや腫れがある場合
歯茎や周囲の組織が炎症を起こしている可能性があります。早めに歯科医師の診察を受けてください。
咬み合わせの問題が生じた場合
矯正が進む中で咬み合わせに異常が生じた場合、歯や顎に余計な負担がかかり、痛みが引き起こされることがあります。定期健診で適切な調整を行いましょう。
まとめ
マウスピース矯正は、治療中に一時的な痛みを感じることがあります。新しいマウスピースへの交換時やアタッチメントの装着時など、痛みを感じやすいタイミングを理解し、適切に対処することで、治療を快適に進めることができます。
また、痛みが長引いたり激しくなる場合は、無理をせず歯科医師に相談することが大切です。適切なケアとサポートを受けながら、理想の歯並びを目指していきましょう。