歯と口のトラブル

舌が痛いのはどんな疾患?

舌が痛いのはどんな疾患?

舌が痛む場合、食事中に刺激を感じたり、口内炎ができてしまうことなど、軽度な原因であれば自然に治ることもあります。しかし、舌の痛みが続く場合や、他の症状を伴う場合は、何かしらの疾患が隠れている可能性があります。舌の痛みの原因として考えられる疾患についてご説明します。

舌の痛みのよくある原因

舌の痛み

舌が痛いと感じることは誰にでもある症状ですが、その原因はさまざまです。ここでは、舌の痛みを引き起こす一般的な原因をご説明していきます。

物理的な刺激

食事中に硬い食べ物を噛んだり、舌を誤って噛むことがあります。このような物理的な刺激は、舌の表面に小さな傷を作り、痛みや違和感を引き起こすことがあります。特に、辛いものや酸味の強い食べ物を摂取した際には、傷が刺激され、痛みが増すことがあります。

また、口内に合わない入れ歯や矯正器具、尖った歯などが舌に長期間接触していると、舌の組織が損傷を受け、痛みや炎症を引き起こすことがあります。

口内の乾燥

唾液は、舌を保護する重要な役割を果たしています。唾液が少なくなると口内が乾燥し、舌が敏感になりやすくなります。これによって、軽い刺激でも痛みを感じやすくなります。特に、加齢や薬の副作用、ストレスなどが原因で唾液の分泌が減少すると、舌の乾燥が進み、痛みを伴うことがあります。

歯垢の蓄積と舌の衛生状態

歯垢は歯にだけでなく、舌にも付着することがあります。舌に歯垢が蓄積すると、舌の上で細菌の繁殖が進み、舌の表面に炎症を引き起こすことがあります。これが痛みや不快感の原因となることが多いです。

舌の表面に歯垢が溜まることを防ぐためには、日常的な舌磨きや口腔内の清潔を保つことが重要です。特に、歯磨きの際に舌の表面も優しくブラシする習慣をつけることで、舌の健康を保つことができます。※舌専用のブラシを使用しましょう

感染症

ウイルスや細菌による感染症も舌の痛みの原因となります。例えば、ヘルペスウイルスによる感染は、口腔内に潰瘍や水ぶくれを形成し、これが強い痛みを引き起こすことがあります。さらに、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかった際、免疫力の低下により、舌に口内炎ができやすくなり、これが痛みの原因となることがあります。

アレルギー反応

アレルギーも舌の痛みの原因となることがあります。特定の食品や薬に対してアレルギー反応を起こすと、舌が腫れたり、痛みを伴ったりすることがあります。食べ物や薬にアレルギー反応が見られた場合は、原因物質を特定し、避けることが重要です。

栄養不足

ビタミンB群、特にビタミンB12の不足は、舌に痛みを感じる要因となることがあります。ビタミンB12が不足すると、舌の粘膜が弱くなり、炎症を引き起こしやすくなります。鉄分不足や亜鉛不足も同様に、舌の健康に影響を与え、痛みを伴うことがあります。栄養バランスの取れた食事を心がけることが、舌の健康を維持するために重要です。

舌の痛みは、これらのような様々な原因によって引き起こされます。物理的な要因や栄養不足、感染症といった基本的な原因から、アレルギーや唾液の分泌不足による影響まで、考えられる要因を把握し、適切な対処を行うことが大切です。

口内炎

口内炎

舌が痛む場合、最も一般的な原因の一つが口内炎です。口内炎は小さな潰瘍ができることで発生し、特に酸性の食品や辛い食べ物を摂るときに痛みが増します。

口内炎の原因は次のように分類できます。

  • ストレスや疲労・・免疫力が低下することで、口内炎が発生しやすくなります。
  • 栄養不足・・ビタミンB群や鉄分の不足も口内炎の原因になることがあります。
  • 歯磨き不足・・口腔内の衛生状態が悪化すると、細菌が繁殖し、口内炎を引き起こすことがあります。

軽度の口内炎は自然治癒することが多いですが、痛みが続く場合は早めに歯科医師に相談することが重要です。

舌がんの可能性

舌の痛みが長期間続き、痛みの程度が増してくる場合、舌がんの可能性も考慮する必要があります。舌がんは初期症状として小さな潰瘍やしこりを伴うことがあり、これが痛みとして現れることが多いです。舌がんのリスク要因としては以下のようなものがあります。

  • 喫煙・・タバコは舌がんの最大のリスクファクターです。
  • 飲酒・・アルコールの摂取も舌がんの発症リスクを高める要因です。
  • 慢性的な刺激・・義歯や尖った歯が舌に長期間刺激を与えることも、がんを誘発する可能性があります。

舌がんの早期発見は予後に大きく影響するため、舌の痛みや異常を感じたらすぐに健診を受けることが推奨されます。

舌苔による炎症と痛み

舌の表面に白いまたは黄色い苔のようなものが溜まる舌苔(ぜったい)も、舌の痛みを引き起こすことがあります。舌苔は口腔内の衛生状態が悪化した場合や、消化器系のトラブルが原因で発生します。主な原因は以下の通りです。

  • 唾液の減少・・唾液が減少すると舌苔が増えやすくなります。
  • 口腔内の細菌の増殖・・歯磨きや舌磨きを怠ると、細菌が繁殖し、炎症や痛みを引き起こします。
  • 消化器系の不調・・胃の調子が悪いときにも舌苔が発生することがあります。

舌苔を予防するには、定期的な舌の清掃と歯磨きが効果的です。また、消化器系の健康を保つためにバランスの取れた食事を心がけましょう。

舌の痛みと全身疾患の関連

舌の痛みは、全身の健康状態と密接に関連している場合もあります。特に次のような疾患が原因となることがあります。

  • 鉄欠乏性貧血・・鉄分不足による貧血は、舌が炎症を起こして痛むことがあります。
  • 糖尿病・・血糖値のコントロールが不十分な場合、口腔内が乾燥し、舌の痛みが現れることがあります。
  • シェーグレン症候群・・免疫系の異常により唾液の分泌が低下し、舌の痛みや乾燥を引き起こします。

これらの疾患が疑われる場合は、医師による早期の診断と治療が重要です。

舌の痛みを予防するためのセルフケア方法

歯磨き

舌の痛みを予防するためには、日常生活でのセルフケアが非常に重要です。以下の方法を実践することで、舌の健康を保つことができます。

1. 定期的な歯磨きで口腔内の衛生を保つ

舌の健康を保つためには、口腔内全体の衛生状態が重要です。歯磨きは歯だけでなく、舌や口腔内全体の細菌を取り除く役割を果たします。歯磨きを怠ると、舌に細菌が溜まり、炎症や痛みの原因となることがあります。特に、舌の表面には無数の小さな突起があり、ここに歯垢や食べかすが溜まりやすいため、舌磨きも忘れずに行うことが大切です。舌専用のブラシを使用し、優しく舌の表面を清掃することで、細菌の繁殖を防ぐことができます。

2. 舌磨きを適切に行う

舌磨きは舌の痛みを予防するために非常に効果的ですが、強くこすりすぎると逆に舌を傷つける恐れがあります。舌の表面はデリケートな組織で覆われているため、強い摩擦や刺激は炎症や痛みを引き起こす可能性があります。したがって、舌磨きは優しい力で行うようにし、舌専用のソフトブラシや舌スクレーパーを使って、穏やかに汚れを取り除くことが推奨されます。また、舌磨きの頻度も重要で、食後に行うことで舌の表面に付着した食べ物のカスや細菌を取り除きやすくなります。

3. バランスの取れた食事と栄養補給

食事

舌の健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が必要です。特に、舌の痛みや炎症を予防するためには、次の栄養素が効果的です。

  • ビタミンB群・・舌の粘膜の健康を保つために重要な役割を果たします。ビタミンB12が不足すると、舌が赤く腫れ、痛みが生じやすくなります。肉や魚、卵、乳製品などをバランスよく摂取することが大切です。
  • 鉄分・・鉄分不足は貧血を引き起こし、舌の痛みや炎症の原因となることがあります。鉄分は、レバーやほうれん草、赤身肉などから摂取できます。
  • 亜鉛・・亜鉛は細胞の修復と成長を助け、舌の粘膜の健康を維持します。亜鉛を含む食品には、魚介類やナッツ類が挙げられます。

これらの栄養素を意識的に取り入れることで、舌の健康を保ち、痛みの発生を予防することが可能です。

4. 適度な水分補給

お口の中が乾燥すると、唾液の分泌が減少し、舌が乾燥して痛みを感じやすくなります。唾液には細菌を抑える抗菌作用があるため、唾液の分泌が減ると細菌が繁殖しやすくなり、口腔内の炎症や舌の痛みを引き起こします。適切な水分補給を心がけ、常に口腔内が潤っている状態を保つことが重要です。

特に、高齢者や特定の薬を服用している人は唾液の分泌が減少しやすいため、意識的に水分を摂取し、口腔内を潤す努力が必要です。また、ガムを噛むことで唾液の分泌を促進することも効果的です。

5. 禁煙・節酒

喫煙や過度な飲酒は舌に直接的なダメージを与え、舌がんや口腔内の炎症を引き起こすリスクが高まります。タバコの煙には有害な化学物質が含まれており、これが舌の粘膜を刺激し、痛みや腫れを引き起こす原因となります。また、アルコールも口腔内を乾燥させ、舌の痛みの原因になることがあります。

喫煙を控え、飲酒も適度にすることで、舌の痛みを予防し、口腔内全体の健康を守ることができます。

6. ストレスをコントロールする

ストレスは舌の健康にも影響を与えます。ストレスが溜まると、免疫力が低下し、口内炎ができやすくなります。また、ストレスによって口腔内が乾燥し、舌の痛みを感じることもあります。ストレスを溜め込まないよう、適度な休息やリラクゼーションを取り入れ、心身の健康を保つことが、舌の痛みを予防するために重要です。

舌の痛みを予防するためには、毎日の歯磨きや生活習慣を見直してみましょう。適切な歯磨きや舌磨きを習慣化し、バランスの取れた食事を心がけること、そして定期的に健診を受けることで、舌の健康を保ち、痛みを防ぐことができます。

舌の痛みが続く場合は、早めに歯科医師や医師に相談しましょう。

まとめ

舌の痛みは、軽度なものから深刻な病気までさまざまな原因が考えられます。口内炎や舌苔、全身疾患などの要因が痛みを引き起こすことがあり、痛みが続く場合は、医師の診察を受けることが重要です。

毎日のセルフケアを丁寧に行い、お口の中を衛生的保つことも予防に役立ちますが、異常を感じたら早めに専門家に相談しましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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茨木クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック