銀歯の詰め物、被せ物は二次虫歯(二次カリエス)と呼ばれる虫歯の再発を起こしやすいといわれています。銀歯は保険適用で治療する場合の代表的な素材で費用の面などのメリットもありますので、ご説明します。
銀歯の特徴
銀歯は、虫歯治療後に歯を修復するために使われる銀色の金属製の詰め物や被せ物のことをいいます。強度が必要な奥歯に用いられ、毎日の食事でものを噛むことに耐えられる頑丈さが特徴です。
保険適用の金銀パラジウム合金(いわゆる「銀歯」)は耐久性が高い一方で、見た目が銀色で目立つため、前歯にはあまり使用されません。
銀歯のメリット
- 強度が高い・・硬い食べ物を噛んでも割れにくい
- 保険が適用される・・比較的安価に治療が受けられる
しかし銀歯は見た目が自然歯とは異なり、銀色に光って目立ちますし、長期間使用することで歯との境目が劣化していくというデメリットがあります。
銀歯の下で二次虫歯はこうして出来る
虫歯菌と呼ばれる菌の中でも代表的なものはストレプトコッカス・ミュータンスという名前で、約1μm(ミクロンメートル)の大きさです。1μmは1000分の1ミリで、とても小さいものですから、もし銀歯の歯が虫歯菌の出す酸で溶けてしまって銀歯と歯の間に隙間ができると、そこに虫歯菌はどんどん入り込んでいきます。
詰め物をして治療する虫歯の進行具合は「C2」です。そのため銀歯の詰め物は象牙質に接着されています。虫歯菌はとても小さいので、銀歯と歯の間に侵入して虫歯を作っていきますが、銀歯の下で虫歯ができても、歯と銀歯は接着剤でしっかりとつけてありますので、すぐに銀歯が外れてしまうことはありません。
そのため、虫歯を削って銀歯を詰めて治療しても、「冷たいものに歯がしみる」「時々急に痛くなることがある」「噛むと痛い」などの虫歯の症状が出ることになります。しかし治療済みの歯なので、患者さん自身はまさか虫歯だとは思わず、歯医者に行くのが遅れて、二次虫歯がひどくなってしまいます。
銀歯による二次虫歯が発生しやすい理由
- 歯と銀歯の境目に隙間ができやすい・・銀歯は金属なので、時間が経つにつれて歯との間に小さな隙間ができやすく、そこに歯垢が溜まると虫歯が再発することがあります。
- 銀歯の下で進行する虫歯が見つけにくい・・銀歯は見た目では虫歯の進行を確認しづらいため、虫歯が悪化するまで気づきにくいという欠点があります。
- 正しい方法での歯磨きが重要・・歯と銀歯の境目をしっかりと歯磨きしないと、歯垢がたまり、二次虫歯のリスクが高まります。
銀歯の寿命は何年?
実は天然の歯と違い、詰め物やかぶせ物にはそれぞれ寿命があって、生涯にわたってずっと使うことは出来ません。保険の銀歯にもおおよその寿命があります。銀歯で治療を受けた全ての患者さんに当てはまるものではありませんが、平均的な傾向は下記のようになります。
保険の銀歯の寿命
かぶせ物が何らかの原因により、50%がダメになる年数は、
- 銀歯の詰め物 約5年
- 銀歯のかぶせ物 約5年
- 銀歯をつないだブリッジ 約7年
銀歯の寿命はかぶせ物や詰め物の素材としては長くない方ですが、患者さんのライフスタイルや、定期健診(予防歯科)を受けているかどうかによっても、銀歯の寿命の長さは大きく変化します。自宅での歯磨きなどの口腔ケアをサボって大切に扱わなかったり、定期健診を受けていなければ、銀歯はもっと早く劣化する可能性があります。
銀歯が劣化する要因
- 噛む力による負担・・噛む力が強い方や、歯ぎしりの癖がある方は、銀歯が早く劣化することがあります。
- 歯磨きの不足・・歯垢がたまりやすい状態が続くと、銀歯の周囲が劣化しやすくなります。
- 定期的な健診を受けていない・・定期的に歯科医での健診を受け、銀歯の状態をチェックしないと、劣化に気づかず、二次虫歯のリスクが高まります。
虫歯になるってどんな状態?
まず、虫歯とはどのような状態のことをいうのかご説明します。歯に食べかすが残っていると、その中に細菌が繁殖します。すると食べかすは白くネバネバした状態になり、歯垢(プラーク)と呼ばれるようになります。
それらの細菌の中には虫歯菌や歯周病菌がたくさんいます。私たちが食事をして排泄するように、虫歯菌(ミュータンス菌)は「糖」を食べて「酸」を排泄しています。虫歯菌が出す「酸」によって歯が溶けてしまった状態を虫歯といいます。
虫歯菌が排泄する酸は歯を溶かすだけでなく、銀歯の詰め物や被せ物も同時に溶かしてしまいます。
更に、歯周病菌も銀歯に対して悪さをします。歯周病菌が出すメチルメルカプタンというガスと、銀が反応すると「硫化銀」という錆をつくります。銀が劣化すると詰め物と歯の境目に錆が出来て、隙間を形成してしまうのです。
銀歯を外してみると中で虫歯になっていた、という一般的に「二次虫歯」と呼ばれるものは、こうして発生します。
二次虫歯の予防には歯磨きと定期健診が大切
二次虫歯を予防するにはどういうことに気を付ける必要があるのでしょうか?それには、毎日のセルフケアで丁寧に歯垢を落とすことと、歯医者での定期健診に通うことが重要になります。
銀歯をセラミックやオールセラミック、ジルコニアに変えるのも一つの方法でおすすめです。セラミックを使用すると更に二次虫歯になりにくいので、二次虫歯の予防に効果があります。
銀歯の劣化を知るには、1年に3~4回の歯医者に通院して定期健診を必ず受けていただき、お口の中に問題がないかチェックすることです。早めに気付けば二次虫歯が大きくなる前に銀歯を新しいものに交換できます。
二次虫歯を予防するためのポイント
銀歯を装着している患者さんが二次虫歯を予防するためには、以下のポイントを意識しましょう。
1. 正しい方法で歯磨きを行う
歯垢がたまりやすい銀歯の境目を意識して、丁寧に磨きましょう。銀歯の周囲は念入りにケアすることが大切です。
2. デンタルフロスや歯間ブラシの使用
歯間はとても狭いので歯ブラシの毛先が入りません。歯磨きだけでは除去できない歯垢を、デンタルフロスや歯間ブラシでしっかりと取り除きましょう。
3. 定期的な健診を受ける
3~6ヶ月に一度のタイミングで健診を受け、銀歯の状態や周囲の歯茎のチェックを行いましょう。歯肉炎や虫歯を起こしていないかのチェックは、今後のお口の健康のために特に大切です。
4. 噛み合わせのチェック
銀歯での治療を行った後、噛み合わせに問題があると、銀歯に過剰な力がかかり、劣化が早まります。歯科医に定期的に噛み合わせを確認してもらいましょう。
なぜ銀歯は二次虫歯になりやすいかに関するQ&A
銀歯が二次虫歯になりやすい理由は、銀歯の詰め物や被せ物が虫歯菌によって溶かされることが挙げられます。虫歯菌が排泄する酸によって銀歯が溶け、虫歯ができる可能性が高まります。また、銀歯の下に虫歯ができる原因として、歯周病菌が出すガスと銀が反応して隙間を形成することも影響しています。
銀歯の寿命はかぶせ物や詰め物の素材によって異なりますが、保険の銀歯の場合、以下のような平均的な寿命が考えられます。
・銀歯の詰め物: 約5年
・銀歯のかぶせ物: 約5年
・銀歯をつないだブリッジ: 約7年
ただし、患者さんのライフスタイルや定期健診の頻度によっても寿命は変化します。適切なケアと定期健診を受けることで寿命を延ばすことができます。
銀歯をセラミックやオールセラミック、ジルコニアに変えることで虫歯のリスクが減る傾向があります。セラミックは虫歯菌に対して銀よりも耐久性があり、二次虫歯のリスクを低減させることができます。しかし、セラミックにも適切なケアと定期健診が必要です。
まとめ
このように保険で手軽に治療できる銀歯には寿命があって、約5~7年で治療をやり直す可能性が非常に高いのです。虫歯菌によって溶かされた銀歯の端から虫歯菌が侵入して、銀歯の下で虫歯が進行するからです。
ですから、虫歯の治療として詰め物や被せ物の材料をどうするか選ぶ際には、今後の歯の治療のことも含めて慎重に選んで頂きたいと思います。
詰め物・被せ物の劣化を防ぐことはできませんが、定期健診によってその劣化を知ることは出来ますので、劣化した詰め物を新しいものに交換するかどうかは担当医と話し合ってお決めくださいね。