矯正歯科

矯正治療が必要なレベルかどうかはどうやって決まる?

矯正治療が必要なレベルかどうかはどうやって決まる?

歯並びが気になるけれど矯正治療が必要かどうかわからない方の場合は、まず矯正歯科に相談してみましょう。様々な検査によって、矯正治療が必要かどうかが診断されます。

矯正治療を行う目的

1. 審美的な改善

矯正治療の最もよく知られている目的の一つが「審美的な改善」です。歯並びが整っていることは、美しい笑顔や自信につながるため、多くの患者が矯正治療を検討する理由となります。

笑顔のバランス

歯並びや歯の配置が整うことで、笑顔のバランスが改善され、顔全体の調和が取れた見た目になります。特に、前歯の位置や形が重要であり、これによって全体の印象が大きく変わります。

自信と自己肯定感の向上

歯並びが整うと、笑顔に自信が持てるようになるため、自己肯定感や社交的な態度にもプラスの影響を与えることが多いです。特に若年層や成人において、矯正治療は心理的な影響が大きいとされています。

美的基準

文化的背景や社会的な美の基準によって、歯並びに対する期待や理想が異なることもあります。日本でも近年、歯列矯正が美しさの一環として広く認識されるようになってきています。

2. 機能的な改善

機能的な改善は、矯正治療を行うもう一つの重要な目的です。歯並びの悪さが原因で、食事や日常の生活に支障をきたしている場合、矯正治療によってこれらの問題を解決することができます。

噛み合わせの改善

噛み合わせが悪いと、食べ物をうまく噛み砕けなかったり、咀嚼に不快感を伴うことがあります。矯正治療によって正しい噛み合わせにすることで、食事の効率や消化機能の向上が期待されます。また、歯に不均等な力がかかるのを防ぎ、歯や顎の健康を守る役割もあります。

発音の向上

歯並びや噛み合わせが悪いと、一部の音を正確に発音できないことがあります。特に「サ行」や「タ行」などの音は、前歯の位置に依存するため、歯並びを整えることで発音が改善されるケースも多いです。

顎関節への影響

不正咬合や噛み合わせの問題がある場合、顎関節に過度な負担がかかり、顎関節症を引き起こすリスクがあります。矯正治療によってこれを予防し、顎の健康を保つことができます。

3. 健康的な影響の予防

矯正治療の最後の目的として、将来的な健康リスクの予防が挙げられます。特に、歯並びが悪いことによって口腔内の健康が損なわれるリスクが高くなるため、これを予防することが重要です。

虫歯・歯周病のリスク低減

歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい部分が増え、食べ物のカスやプラークが溜まりやすくなります。このため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。矯正治療を行うことで、歯の隅々までしっかりとブラッシングできるようになり、これらのリスクを低減させることができます。

歯の過剰摩耗の予防

噛み合わせが悪いと、一部の歯に過剰な力がかかり、歯が早く磨り減ることがあります。これが進行すると、歯の寿命が短くなり、さらに治療が必要となる場合があります。矯正治療で噛み合わせを整えることで、歯の摩耗を防ぐことができます。

全身の健康への影響

近年、口腔内の健康と全身の健康が密接に関連していることが明らかになっています。特に、歯周病は心臓病や糖尿病など全身の疾患に影響を与えることがあるため、矯正治療によって口腔内の環境を改善することが全身の健康にもつながる可能性があります。

矯正治療を受けるべき症状

歯並びの矯正治療を受けるべき不正咬合には以下のような症状があります。

不正咬合の種類

1. 出っ歯・受け口

上の前歯が前方に突き出ているか、下の前歯が上の前歯よりも前に位置している状態。

・歯が出ているため、唇を閉じにくい
・唇を閉じるのに唇に力が入れるため、顎に梅干し皺ができる
・口元全体が出ている口ゴボの状態
・上の前歯と下の前歯の間が前後に5mm以上あいている

2. 過蓋咬合

上の前歯が下の前歯に大きく被さって下の歯が隠れてしまっている状態。

3. 開咬

奥歯を噛んだ時に前歯が上下に開いてしまって接触しない状態。

4. 交叉咬合

正常な咬合では上の前歯が下の前歯に少し被さった状態ですが、交叉咬合は前歯や奥歯の何本かが逆に交叉している状態です。片方の奥歯が交叉咬合の場合は顎をずらして噛む癖が付いているため、顔が歪むこともあります。

5. すきっ歯

歯と歯の間にスペースがあったり、歯と歯が離れている状態。

6. 叢生

顎が小さく歯が並ぶためのスペースが不足しているために、歯が詰まった状態で重なり合っている。

7. 正中線のズレ

上の前歯と下の前歯の中心が合っていない状態。

8. 捻転歯

捻転歯(ねんてんし)とは、歯が正常な位置から回転してねじれた状態で生えてしまっている状態です。

これらの不正咬合の症状の中には、主に見た目に問題がある場合と、見た目に加えて噛み合わせに問題があって咀嚼がしにくい、顎のずれ等の問題が起こっている場合があります。

顎関節に異常が起こると、全身に影響が及ぶ可能性がありますので、不正咬合が疑われる場合は、歯科医師に相談して、矯正治療の必要性や方法についてのアドバイスを受けることをおすすめします。

矯正歯科の治療前のチェック

歯並び矯正の治療前には、様々な検査が行われ、最終的な診断となります。これらのチェックは全て治療計画を立てるために参考にされます。

1. 視診

現在の歯並びや噛み合わせや歯茎の状態を、歯科医師が目で見て確認します。

2. 写真撮影

口腔内の状態を写真撮影します。口腔内に加えて、お顔の正面や側面からの写真を撮影する場合もあります。これらの写真は、今後治療が進んでいく際に歯並びの変化を比較するための資料となります。

3. レントゲン撮影

パノラマやセファロなどのレントゲン撮影を行い、歯の状態や顎の骨の状態を確認します。

4. 噛み合わせのチェック

上下の歯の咬合のバランスや噛んだ時の接触状態を確認します。

5. 虫歯や歯周病の有無の確認

むし歯や歯周病があった場合、矯正治療の前にまず虫歯、歯周病の治療が行われる場合が多いです。

これらのチェック以外に歯型を採取して模型を作製する場合もあります。

矯正歯科治療について | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 (jos.gr.jp)

矯正治療のリスクと副作用

1. 一時的な歯の痛みや不快感

矯正治療を始めた直後、特にワイヤー矯正やゴムの使用に伴い、歯が動き始める過程で痛みや不快感を感じることがよくあります。

痛みの原因

歯が動く際、歯根と歯槽骨(歯を支える骨)が変化するため、その圧力が神経に影響を与え、一時的な痛みを引き起こします。通常、この痛みは数日から1週間ほどで緩和されますが、患者によって感じ方は異なります。

対処法

軽度の痛みであれば市販の鎮痛薬で対処できます。また、柔らかい食事を選び、治療中に歯や顎に負担をかけないようにすることも有効です。痛みが長期間続く場合は、矯正専門医に相談することが重要です。

2. 歯根の吸収(歯根短縮)

矯正治療を行う際に歯が動く過程で、歯の根が少しずつ短くなる「歯根吸収」が起こる可能性があります。これは通常、軽微で問題にはなりませんが、まれに進行すると歯の安定性に影響を与えることがあります。

原因

歯が移動する際に、歯を支える骨が吸収されて新しい骨が形成されます。この過程で、歯根の吸収が進むことがあります。特に、治療が長期間にわたる場合や過度な力がかかっている場合にリスクが高くなります。

予防策

定期的なレントゲン検査を行い、歯根の状態を確認することで、歯根吸収の早期発見と対処が可能です。過剰な力をかけないように調整することも予防策の一つです。

3. 虫歯や歯周病のリスク

矯正装置を装着している間、歯磨きが難しくなり、歯にプラークが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特にワイヤー矯正の場合、装置の隙間に食べ物が詰まりやすくなるため、日常的なケアが非常に重要です。

予防策

毎日の正しい歯磨きやフロスの使用に加え、矯正治療中は定期的なプロフェッショナルクリーニングが推奨されます。また、フッ素入りの歯磨き粉やマウスウォッシュを使用することで虫歯予防を強化することが可能です。特に、ワイヤーやブラケットの周辺を重点的に清掃することが重要です。

歯周病のリスク

歯の周りにプラークが溜まると歯肉が炎症を起こし、歯周病のリスクが高まります。歯周病は放置すると歯を支える骨が減少し、最悪の場合、歯を失う可能性があります。そのため、歯肉の腫れや出血が見られた場合は、早めに歯科医に相談することが重要です。

4. アレルギー反応

矯正器具の素材に対してアレルギー反応が出る場合があります。特に、金属アレルギーのある患者は、金属製の矯正器具を使用すると皮膚や歯肉に炎症やかぶれが生じることがあります。

原因

ワイヤー矯正の器具はステンレスやニッケルを含む金属で作られることが多いため、これに反応するケースがあります。金属アレルギーを持つ患者の場合は、事前にアレルギー検査を行うことが推奨されます。

対処法

金属アレルギーがある場合は、プラスチックやセラミック製の器具に変更するなど、適切な素材を選ぶことが重要です。医師に相談することで、アレルギーのリスクを最小限に抑える治療方法を選択することが可能です。

5. リテーナー(保定装置)の使用による影響

矯正治療が完了した後、歯の位置を維持するためにリテーナー(保定装置)を装着する必要があります。このリテーナーの使用を怠ると、治療が終わっても歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」が発生することがあります。

後戻りのリスク

矯正治療を終えた後、数か月から1年間は歯が安定しないため、リテーナーの使用が推奨されます。リテーナーの着用を怠ると、歯が再び動き始め、元の位置に戻ることがあります。

対策

リテーナーの使用期間は個々の治療内容に応じて異なりますが、指定された期間を守ってしっかりと装着することが重要です。また、リテーナーのメンテナンスや清掃も定期的に行い、口腔内の健康を保つことが必要です。

6. 顎関節症のリスク

矯正治療中、特に顎の噛み合わせが調整される過程で、顎関節に負担がかかることがあります。これにより、一時的に顎関節症の症状(顎の痛み、カクカク音、口が開けづらくなる)が現れることがあります。

原因

矯正治療によって噛み合わせが変わると、顎関節にかかる負荷が増減することがあります。この影響で顎関節に違和感や痛みが生じることがあります。

対処法

軽度の顎関節症であれば、治療の進行に伴い自然に改善することが多いですが、症状が続く場合や悪化する場合は、矯正専門医や顎関節の専門医に相談することが必要です。

これらのリスクや副作用に対して、矯正治療を受ける前に十分な説明と理解が必要です。リスクを最小限に抑え、効果的な治療を行うためには、適切なケアと専門医との継続的なコミュニケーションが重要です。

矯正歯科治療の期間はどの位かかる?

実際の治療期間は不正咬合の程度によって違いますので、はっきりと決まった期間は申し上げられませんが、歯全体を動かす全体矯正の場合は、平均2~3年程度です。

若い年齢の方は歯が動きやすい為、高校生くらいの患者さんは2年程度で治療を終える方が多い反面、20代以降の方は3年前後かかる場合もあります。

この矯正期間に加えて、歯列が後戻りを起こさないように安定させるための保定期間というものがあり、リテーナー(保定装置)を付けて頂きます。

矯正治療直後の歯は動きやすくなっているため、リテーナーをきちんとつけて頂かないと歯並びが少し元に戻ってしまいます。

まとめ

不正咬合の症状には出っ歯、受け口、過蓋咬合、開咬、交叉咬合、すきっ歯、叢生、正中線のズレ、捻転歯などがあります。

これらは見た目だけでなく噛み合わせや顎関節にも影響を及ぼす可能性があります。歯並びが気になる方は、歯科医師に相談して治療が必要かどうか確認しましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

▶プロフィールを見る

茨木クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック