入れ歯

入れ歯が原因で顎関節が痛むことはある?

入れ歯をすると顎が痛いのはなぜ?

入れ歯を入れて顎関節が痛くなった時、痛みの原因が気になります。入れ歯を使用した際の痛みの原因は、装着後に上下左右の噛み合わせの悪さ、バランスの悪さが悪くなったことがあげられます。

入れ歯を使用することで顎関節に痛みが生じる理由

入れ歯を使っていて顎関節に痛みが出た場合の理由についてご説明します。入れ歯がぴったり合っていれば顎関節の痛みは起こりませんので、何か合わない原因があるものと思われます。以下の点を参考になさってください。

1. かみ合わせの不具合による影響

入れ歯を使用する場合、天然の歯とは異なり、人工物が口の中に入ることで噛み合わせのバランスが崩れることがあります。この噛み合わせの不具合は、顎関節に不自然な力がかかる原因となり、結果として関節に負担がかかるのです。特に次のようなケースが問題となります。

上下の歯の位置がずれている

かみ合わせが正確でない場合、食事の際に片側の歯にだけ負担がかかり、顎関節に偏った力が加わります。このような不均衡な力が長期間続くと、関節に炎症や疲労が生じ、痛みを引き起こします。

入れ歯の咬合面の高さが合っていない

入れ歯の高さが低すぎたり高すぎたりすると、噛む動作に違和感が生じ、関節に過剰な負担がかかります。

2. 入れ歯が安定していない場合の影響

入れ歯がしっかりと安定していない場合、食事や会話をしている際に入れ歯が動いてしまい、顎関節にストレスがかかることがあります。特に以下の要因が痛みを引き起こします。

入れ歯が緩んでいる

入れ歯が緩んでいると、使用中に動いてしまい、口の中で常に不安定な状態になります。この動きが顎関節に不要な負荷をかけ、痛みを引き起こします。

入れ歯の装着位置が不適切

入れ歯がきちんと装着されていない場合、食事中に何度も微調整を行うことが必要になり、顎関節に負担がかかります。

3. 筋肉の過緊張による影響

入れ歯が適切にフィットしていない場合、顎周辺の筋肉(咬筋や側頭筋)が常に緊張状態になることがあります。この筋肉の過度な緊張が、顎関節の痛みにつながります。具体的には以下のメカニズムで痛みが生じます。

筋肉の疲労

噛み合わせが悪いと、食事や会話のたびに筋肉が過剰に働くため、筋肉が疲労しやすくなります。この筋肉の疲労感が、顎関節の痛みとして現れることがあります。

筋肉のこわばり

筋肉が過度に緊張して硬くなると、顎の動きが制限され、関節の滑らかな動作が妨げられ、痛みが生じます。

4. 顎関節にかかる圧力の増加

入れ歯を使用することで、顎関節にかかる圧力が増えることがあります。特に、硬い食べ物を噛む際には、入れ歯に直接かかる圧力が顎関節に伝わり、関節が圧迫されることがあります。この圧迫が頻繁に続くと、関節自体が損傷し、痛みが発生します。

硬い食べ物の摂取

硬いものを噛む際に、入れ歯が十分に適合していない場合、かみ合わせのバランスが崩れ、関節に強い負荷がかかります。この繰り返しが顎関節に痛みを引き起こす原因となります。

5. 入れ歯の経年劣化による影響

入れ歯は使用するうちに、材質が劣化してきます。この経年劣化によって、かみ合わせの精度が低下し、顎関節にかかる力が不均等になることがあります。具体的には、以下の問題が考えられます:

入れ歯の摩耗

長期間使用することで入れ歯の咬合面が摩耗し、正しいかみ合わせが維持できなくなることがあります。この摩耗が進むと、顎関節に偏った力が加わり、痛みを感じることが多くなります。

入れ歯の材質の変化

プラスチックや金属部分が長年の使用で劣化すると、入れ歯がフィットしづらくなり、装着時に違和感や痛みが生じやすくなります。

顎関節症とは

顎関節症の症状

顎関節症には、下記のような症状が主に見られます。

  • 顎が痛む(顎関節痛)
  • 口が大きく開けられない(開口障害)
  • 顎を動かすとバキッというような大きな音がする(顎関節雑音)

顎関節症は年齢に関係したものではありません。年齢が若い方では歯並びや噛む時の癖で起きますし、年齢を重ねた方では歯を失くして入れ歯を装着した状態で起きます。あごを正常に動かせないことにより筋肉や顎関節が痛む方、顎関節がずれる方など様々です。

入れ歯と顎関節症との関連性

顎関節症は、顎の関節や周囲の筋肉に痛みや不快感を引き起こす状態であり、入れ歯が原因となることもあります。顎関節症の症状としては、顎のクリック音や耳鳴り、頭痛が含まれます。入れ歯のフィッティングが悪く、噛み合わせが適切でない場合、これらの症状が悪化する可能性があります。こうした症状が見られる場合は、歯科医に相談して入れ歯の調整を行うことが重要です。

入れ歯作製前に知りたい大事なポイント

部分入れ歯

入れ歯の治療をこれから行う方に、入れ歯作製の際に大事なポイントをご説明します。入れ歯作製の際に見た目やきちんとフィットするかという点に注意がいきがちですが、正常に噛めているか、お口周りの筋肉の使い方に偏りがないかなども注意してください。自分でわかりにくいようでしたら、噛み合わせの高さが合っているかどうか担当医に相談しましょう。噛み合わせが低い状態で入れ歯を作製すると、顎関節の周囲の筋肉が緊張したまま弛緩できない状態になり、それが痛みにつながります。

筋肉の緊張による痛み

入れ歯が合わないと、口周りの筋肉が過度に緊張し、痛みを感じることがあります。特に、咬筋や側頭筋が過度に使用されることで、筋肉痛が顎関節の痛みに広がるケースがあります。これにより、食事中や会話中に痛みが感じられる場合があります。

入れ歯のフィットが悪い場合の症状と影響

入れ歯

1. 入れ歯が動くことによる顎関節の負担

フィットが悪い入れ歯は、食事や会話中に動くことが多く、これが顎関節に大きな負担をかける原因となります。特に、顎関節は常に上下左右に動き、繊細なバランスの上で機能しています。そのため、入れ歯がしっかり固定されていないと、顎関節が正しい位置で動けず、結果的に痛みや違和感を引き起こすことがあります。

顎の異常な動き

フィットしていない入れ歯を使い続けると、食事のたびに顎が無理な動きを強いられます。顎関節がその動きに順応しようとすることで、過剰に動いてしまい、痛みが生じることがあります。

片側噛みのリスク

入れ歯が片側でしかうまく噛めない場合、自然と片側だけで食べ物を噛む「片側噛み」が習慣化します。片側噛みは、顎関節に大きな負担をかけ、筋肉のアンバランスを引き起こすため、顎関節症の原因にもなります。

2. 口腔内の健康への悪影響

入れ歯のフィットが悪い場合、単に顎関節だけでなく、口腔全体にも悪影響を及ぼします。入れ歯がしっかり固定されていないと、歯茎や周囲の軟組織に強い摩擦がかかり、炎症や傷が発生することがよくあります。

歯茎の圧迫と痛み

入れ歯がフィットしていないと、歯茎の一部に過度な圧力がかかります。これが繰り返されることで、歯茎が赤く腫れたり、圧迫された部分に痛みを感じたりすることがあります。特に食事中や会話中に痛みを感じやすく、歯茎が傷つくと入れ歯の装着がさらに難しくなります。

粘膜の傷や口内炎の発生

入れ歯が動くことによって、口の中の粘膜がすり減って傷つくことがあります。これが繰り返されると、口内炎が発生しやすくなり、食事や会話をするたびに痛みを感じることになります。

3. 全身的な健康への影響

入れ歯のフィットが悪いことは、全身的な健康にも影響を与えることがあります。特に、入れ歯がうまく機能しないことで食事が不快になり、栄養不足や消化不良の原因となる場合があります。

食事の満足度の低下

入れ歯が適切にフィットしていないと、食べ物を十分に咀嚼できず、食事の楽しさが減ってしまいます。これにより、食べる量が減少し、栄養が偏る可能性があります。

消化不良のリスク

咀嚼が不十分な場合、消化器官に負担がかかりやすくなり、消化不良や胃腸のトラブルが発生することがあります。食べ物を細かく噛み砕けないと、消化酵素がうまく働かず、結果的に胃や腸での消化が遅れ、栄養吸収にも悪影響を与えます。

4. 精神的ストレスの増加

フィットが悪い入れ歯を使い続けると、精神的にもストレスが増加します。入れ歯が不快だと常に意識してしまい、日常生活に支障をきたすことがあります。

常に入れ歯を気にするストレス

入れ歯が動いたり、痛みを感じたりするたびに、その不快感に意識が集中してしまい、会話や食事に集中できなくなります。これが慢性的なストレスにつながり、生活の質が低下します。

社会的な自信の喪失

入れ歯が原因で話しにくかったり、笑う際に不安を感じたりすると、他人とのコミュニケーションにも影響が出ます。結果として、社会的な自信を喪失し、孤立感を感じることがあるかもしれません。

5. 噛み合わせによる頭痛や肩こりの発生

フィットしていない入れ歯は、噛み合わせが悪くなることが多いため、これが体全体に影響を与え、頭痛や肩こりの原因となることがあります。特に、顎や首周りの筋肉が過度に緊張することで、次第に肩や背中の筋肉にまで影響が広がります。

顎関節からくる頭痛

顎関節が正常に機能しない場合、頭蓋骨と繋がっている筋肉が緊張し、頭痛を引き起こすことがあります。これが慢性化すると、生活の質がさらに低下します。

噛み合わせによる肩や首の痛み

フィットしていない入れ歯が原因で噛み合わせが悪くなると、首や肩周辺の筋肉も影響を受け、肩こりや首の痛みを感じることがよくあります。

 

このように、入れ歯のフィットが悪い場合には、顎関節や口腔内だけでなく、全身的な健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。患者さんが快適に入れ歯を使用できるよう、定期的な調整やメンテナンスが非常に重要です。

まとめ

入れ歯で顎関節が痛い場合、作製した入れ歯と噛み合わせが合っておらず、顎がずれて顎関節症になっているケースが多いです。顎関節症になると、大きなお口を開ける行為に痛みが出てしまい、無理な力を使うと口周りの筋肉が固くなり、表情を豊かにすることはできません。入れ歯に違和感がある場合は、作製したクリニックで一度ドクターに確認してもらいましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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茨木クローバー歯科・矯正歯科

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