矯正治療の治療方針が医院によって異なるとしたら、患者さんは驚かれるかもしれません。しかし矯正に対する考え方は歯科医師によって全く異なるのが現状です。その理由についてご説明します。
矯正治療の治療方針とは?
矯正治療を行う際に、歯科医師によって意見が分かれやすいのは、抜歯をするかしないかということです。
矯正治療では歯に矯正装置をつけて1本1本の歯を動かしてきれいに並べるのですが、歯を動かすためには、スペースが必要になります。どの程度のスペースが必要になるかは、患者さんの歯の重なり具合や、出っ歯や受け口の場合はどの程度下げる必要があるかで決まります。
他にも、出っ歯や開咬を治す場合に、歯と歯の間にゴムかけをしたり、スプリングの付いた装置を前歯と奥歯の間に一時的に取り付けたりする場合があり、歯科医師によってゴムや装置の選択に違いがあります。
歯を動かすためのスペースを作る方法
歯を動かすためのスペースを作るためには、2種類の方法があります。
- 小臼歯を抜歯する・・歯を大きく動かす場合
- ディスキング(IPR、スライス)歯の側面を削る・・歯を少し動かすだけで済む場合
治療方針に違いが生まれる理由
歯科医師は大学で矯正の技術を習いますが、多くの歯科医師は勤務先の医院で更に技術を学んだり、有料のセミナーを受講して勉強したりします。
特に矯正治療においては、大学卒業後の知識や技術の積み上げによって、歯を正しい位置に並べるための様々なアイデアやテクニックが取り入れられます。また、歯科医師によってかなりの技術差があることも事実です。
そのため、「抜歯しなければ治療出来ない」という診断の歯科医師と「非抜歯で治療可能」という診断の歯科医師に分かれることになります。
患者さんの事情によって治療方針が変わる場合
歯科医師側の事情ではなく、患者さん側の状況によって治療方針が変わる場合もあります。例えば以下のような場合です。
- 結婚式を控えている場合
- 就職後に転勤がありそうな場合
- 海外留学の予定がある場合
上記のような事情のある方は、「矯正治療のために2~3年もかけて通院できない」となることでしょう。
その場合には、全ての歯に矯正装置をつけて歯の位置と噛み合わせを整える「全体矯正」ではなく、前歯の気になる部分だけの歯並びを治す「部分矯正」で歯並びを治すということも考えられます。
前歯だけの部分矯正は、歯並びの最小限の見た目を整えるための治療であって、噛み合わせを治すことは出来ません。しかも、適用は軽度の不正咬合の方に限られますので、全ての方が部分矯正で治療可能というわけにはいきません。
まとめ
治療方針は歯科医院によって異なる場合もありますが、患者さん側のご都合で治療方針が変わってしまう場合もあります。本来、歯並びの治療は見た目だけを整えればよいというものではなく、噛み合わせも含めて考えなければなりません。治療方針につきましては、担当の歯科医師とよく話し合ってお決めください。