口呼吸は一見無害に思えるかもしれませんが、実は子どもの健康や成長にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。特に、鼻呼吸が自然であるはずの幼少期に口呼吸の習慣がついてしまうと、歯並びの乱れや体の発育にも悪影響を与えることがあります。子どもが口呼吸になる主な理由や、その改善策についてご説明します。
口呼吸になってしまう原因・理由
口呼吸が原因で口腔機能発達不全性になっている子どもたちが増えています。子どもが口呼吸になってしまう理由は、舌や口腔内の筋肉が十分に発達していないことが考えられますが、それを引き起こしたと考えられる原因は主に次のようなものです。
1. 鼻詰まりやアレルギー
子どもが鼻で呼吸できなくなる主な原因の一つが鼻詰まりです。特にアレルギー性鼻炎や慢性的な鼻炎は、子どもにとってよく見られる病気です。鼻が詰まると、子どもは無意識に口で呼吸する習慣がつき、これが慢性化する可能性があります。
- アレルギー性鼻炎・・花粉やハウスダストなどが原因で、鼻の粘膜が炎症を起こし、呼吸が困難になります。アレルギー体質の子どもは特に鼻づまりを起こしやすく、季節性のアレルギーが原因の場合もあります。
- 風邪や鼻炎・・風邪をひくと鼻が詰まりやすくなり、一時的に口呼吸に頼ることが増えますが、これが習慣化する場合もあります。
2. アデノイド肥大
アデノイドは、喉の奥に位置するリンパ組織の一部で、子どもの免疫系をサポートする役割を担っています。しかし、アデノイドが肥大すると鼻からの呼吸が制限され、結果的に口で呼吸するようになります。
- アデノイド肥大の原因・・アレルギーや感染症が原因でアデノイドが肥大することが多いです。特に幼少期の子どもに見られ、成長とともに自然に縮小する場合もありますが、肥大が続くと口呼吸が習慣化してしまいます。
- 治療の必要性・・アデノイドが肥大しすぎる場合、手術による除去が推奨されることがあります。これにより鼻からの呼吸が回復し、口呼吸を改善することが期待されます。
3. 口周りの筋力の発達不足
子どもは、発育段階において口周りの筋力がまだ未熟な場合があります。特に唇や顎の筋肉が発達していないと、口をしっかり閉じることが難しくなり、無意識に口呼吸をすることが多くなります。
- 食生活の影響・・柔らかい食べ物ばかりを食べると、口周りの筋力が十分に鍛えられず、結果として口呼吸の原因になることがあります。硬い食べ物を適度に摂ることで、口や顎の筋力を鍛えることができます。
- トレーニングの必要性・・口周りの筋力が発達していない場合、口の周りの筋肉を鍛えるためのエクササイズが効果的です。特に口を閉じた状態での簡単なトレーニングや噛む力を強化する食生活が推奨されます。
4. 習慣的な癖
一度口呼吸が始まると、それが習慣化しやすくなります。例えば、夜間に無意識に口を開けて寝ることが癖になり、そのまま日中も口呼吸をしてしまうことがあります。このような場合、早めに気づいて改善することが重要です。
- 早期対応の重要性・・口呼吸が長期間続くと、後に顎や歯並びの問題が発生しやすくなるため、親や保護者が子どもの呼吸方法に気を配ることが重要です。
5. 歯並びや噛み合わせが悪い
鼻づまりやアレルギー以外にも、口内のトラブルが口呼吸の原因となることがあります。例えば、歯並びの乱れや噛み合わせの問題がある場合、口を閉じて呼吸することが難しくなり、結果として口呼吸をすることが増えることがあります。
- 歯列矯正の必要性・・歯並びの乱れが口呼吸の原因となっている場合、歯列矯正によって口呼吸を改善することが可能です。歯科医師による定期的な健診を通じて、早期に治療を開始することが望ましいです。
早期に原因を特定し、適切な対応を取ることで、口呼吸による健康リスクを軽減することができます。
子供の口呼吸にはどんな影響があるの?
口呼吸は、子どもの健康に多くの悪影響を及ぼす可能性があります。
歯並びや顔の形に影響
口呼吸を続けると、顎の発達に影響を与え、歯並びが悪くなることがあります。また、顔の形が変わり、口元が前に突き出るような状態になることもあります。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
口で呼吸することで口内が乾燥し、唾液の分泌が減少します。唾液が減るとお口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすい環境になり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
睡眠の質が低下する
口呼吸は深い睡眠を妨げ、子どもが必要な睡眠時間を確保できず、十分な休息を取れない原因となることがあります。この結果、日中の集中力低下や居眠りが起こり、疲れやすさを感じるようになることがあります。
鼻呼吸をすると、鼻がフィルターの役割をしてくれて、空気からゴミや埃やウィルスなどを除去してくれます。しかし口呼吸の場合は、フィルターの機能がありませんので、直接喉から気管に入ってしまい、風邪やアレルギーの原因になります。
それ以外にも、常にお口が開いた状態になっている為、いびきをかいたり、クチャクチャ音を立てて食べるなどの特徴があり、睡眠障害や消化不良になるリスクがあります。
口呼吸の改善方法は?
口呼吸を改善して鼻呼吸出来るようにするための方法をご紹介します。
1. 鼻づまりの治療
アレルギーや鼻炎などによる鼻づまりが原因の場合、適切な治療が必要です。鼻の通りを良くすることで、口呼吸を減らすことができます。
2. 鼻呼吸を促すように寝室の環境を整える
夜間に鼻呼吸を促すために、寝室の湿度を適切に保ち、空気の乾燥を防ぐことが大切です。また、子どもが口を閉じて寝るよう意識づけることも効果的です。
3. 口周りの筋力トレーニング
子どもの口周りの筋力を鍛えるための簡単なエクササイズを日常的に行うことで、自然に口を閉じて呼吸する習慣が身に付きます。
- 寝ている間、口にサージカルテープを貼る
- 片方の歯でばかり噛まずバランス良く両方の歯で噛む
- あいうべ体操
1.寝ている間、口にサージカルテープを貼る
お口の中央に縦にサージカルテープを貼り、寝ている間に口が開かないようにします。「鼻呼吸テープ」、「鼻腔拡張テープ」などの名称でドラッグストアで市販されています。
2.片方の歯でばかり噛まずバランス良く両方の歯で噛む
舌やお口の筋肉の発育を促進するためには、両方の奥歯でバランスよくしっかり噛むことが大切です。ガムを左右の奥歯で噛むことで咀嚼筋を鍛えて、舌を正しい位置に戻すという方法もあります。
3.あいうべ体操
あいうべ体操は、お口の周りの筋肉を鍛えて舌の位置を正しい位置になおすための簡単な体操です。以下の①~④を10回を1セットとして、1日3セットを目易く毎日行いましょう。声は出さなくても大丈夫です。
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に大きく開く
- 「うー」と口をすぼめてできるだけ前に突き出す
- 「べー」と舌をできるだけ下へ伸ばす
家庭でできる口呼吸のチェック方法
子どもが口呼吸をしているかどうかをチェックする方法として、以下のポイントを確認できます。
- 寝ているときの観察・・子どもが寝ている間に口を開けているか、いびきをかいているかを観察します。これらは口呼吸の兆候です。
- 唇の乾燥具合・・日中、子どもの唇が乾燥してひび割れている場合も、口呼吸をしている可能性が考えられます。
- 簡単なテスト・・子どもに口を閉じた状態で深呼吸をしてもらい、鼻呼吸がスムーズにできるかどうかを確認します。
まとめ
子どもの口呼吸は、鼻詰まりやアレルギー、アデノイド肥大、口周りの筋力不足など、さまざまな要因が絡み合って発生します。口呼吸を放置すると、歯並びや顔の形の変化、虫歯や歯周病のリスク、睡眠の質低下といった健康問題に繋がる可能性があります。家庭でのチェックや定期的な歯科健診を通じて、子どもの口呼吸を改善し、健康な成長をサポートしましょう。
子どもが口呼吸になる主な理由は、アデノイドや扁桃腺の肥大、アレルギー性鼻炎、鼻中隔の偏位など、上気道の閉塞に関連する問題です。これらの問題は、鼻を通しての呼吸が困難になり、口を通しての呼吸に頼るようになるためです。口呼吸は、顔面の成長に影響を与え、マロクルージョン(咬合異常)の原因となることがあります。
改善策としては、口呼吸の原因に応じた治療が必要です。アデノイドや扁桃腺の肥大が原因の場合、外科的な介入による除去が考えられます。アレルギー性鼻炎が原因の場合は、アレルギーの管理と治療が必要です。また、鼻中隔の偏位が原因の場合は、外科的矯正が必要な場合があります。
また、口呼吸が原因で生じるマロクルージョンに対しては、矯正歯科治療が有効です。インターセプティブ矯正治療、特に急速な上顎拡大治療は、口呼吸によって引き起こされるマロクルージョンの子どもに利益をもたらすことができます。この治療は、上顎の幅を広げ、鼻腔の通過を改善し、結果として口呼吸を減少させることができます。【Achmad, 2022】
口呼吸の子どもでは、頭部の姿勢にも変化が見られることがあります。口呼吸をする子どもは、頭部を前方に傾ける傾向があり、これが長期にわたると、顔面の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、口呼吸の早期発見と適切な治療は、顔面の正常な成長を促進し、将来のマロクルージョンのリスクを減らすために重要です。【Shrivastava & Thomas, 2012】