インプラント手術はチタン製の人工歯根を顎骨に埋め込みます。そのため痛みや腫れが起こることを心配される方がおられますので、ご説明します。
目次
インプラント手術中の痛みについて
手術は通常、局所麻酔を使用して行われるため、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。局所麻酔がしっかり効いていれば、施術部位の感覚はなくなり、患者さんはリラックスして治療を受けることができます。
また、患者さんが強い緊張を感じる場合には、笑気麻酔や静脈鎮静法を使うこともあり、治療中の不安や痛みを軽減します。
局所麻酔
痛みを感じないようにする基本的な手法で、ほとんどのインプラント手術はこの麻酔で行われます。
笑気麻酔や静脈鎮静法
よりリラックスして手術を受けたい場合や、緊張が強い患者さんにはこれらの方法が提案されることもあります。
インプラント手術後の痛みや腫れはどのくらいある?
インプラント手術の前には、虫歯の治療の時と同じ局所麻酔を行います。麻酔が効いた状態で手術を行うため、手術中は痛みを感じませんが、手術が終わって麻酔が切れたら痛みを感じるようになります。
実際に痛みが出るかどうか、また痛みの強さは、個人によって様々です。中には、少し疼く程度で、痛みとは感じないため、痛み止めを飲む必要がない方もおられます。
痛み
術後数日間、痛みが続くことがありますが、鎮痛剤を服用すれば問題なくコントロールできることが多いです。痛みのピークは手術翌日から2~3日程度で、1週間ほどで徐々に軽減します。
腫れ
インプラント手術では歯茎や骨に対して手術が行われるため、腫れが出ることが一般的です。腫れは手術後2~3日でピークを迎え、その後徐々に引いていきます。冷やすことで腫れを抑えることが可能です。
インプラントの埋入本数が多い方や、GBRなどの増骨を行った方は
手術後に痛みや腫れや皮下出血が起こりやすくなります。
手術後に痛みや腫れが起こるのを防ぐために、鎮痛剤や抗生物質が処方されますので、忘れないように飲み切ってください。薬を飲んでインプラントを埋入した部分を触らないようにしていただければ、歯茎が腫れている方も、早くて2~3日程度、長くても1~2週間ほどでおさまります。
腫れや皮下出血が起こると不安になると思いますが、ピークは術後2~3日後の方が多く、少しずつ治っていきます。術後1~2週間程度たつと、腫れは殆どひいて元通りになるでしょう。
インプラント手術後に腫れる原因は?
インプラント手術を行った後に歯茎が腫れる原因には以下のようなものがあります。
- 手術による反応
- 手術した部位に細菌感染が起こった
- 骨造成を行った
- インプラント周囲炎
1.手術による反応
外科手術により、歯茎を切ったり塗ったりした場合に、傷ついた部位に免疫・防御機能が働き、腫れが起こります。腫れている部分には一時的に血流が増え、傷ついた組織の再生が行われます。そのため、手術による反応としての腫れは、生体の正常な反応で、傷が治ってくるにつれて腫れがひいていきます。
2.手術した部位に細菌感染が起こった
細菌感染による腫れが起こった場合は、手術中または手術後に感染したものと思われます。手術中の感染は、歯科医院のオペ室の衛生管理に問題がある可能性があり、術後の感染はセルフケアに何らかの問題があった可能性があります。
腫れなどの炎症を抑えるために、手術後に痛み止めや抗生物質、消炎剤を処方しますので、きちんと指示通りに服用するようにしましょう。腫れが長引く場合は必ず歯科医院に連絡し、担当医の指示を仰ぎましょう。
3.骨造成を行った
骨の量や質に問題がある場合には、骨を造るためにGBRなどの増骨の処置を行います。増骨を行った場合には広範囲に腫れることがありますので、処方されたお薬をまずきちんと服用しましょう。
骨をたくさん増やす場合は、術後骨が出来るまでの数か月の間に感染が起こる場合もありますので、腫れや痛みが数日でおさまらない場合は、必ず歯科医院にご連絡ください。
4.インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラントの周囲の組織に炎症が起こる感染症のことをいい、歯周病に似た症状を起こします。インプラント周囲炎の初期症状は、歯茎が赤く腫れることですが、そのまま進行すると歯茎が痩せて歯茎に埋まっていたインプラントが露出したり、歯茎から血が出る、インプラントがグラグラになることもあります。
インプラント手術後の痛みや腫れを抑えるためには?
インプラント手術後に痛みや腫れをあまり起こさないためのポイントについてご説明します。
冷やす
手術後最初の48時間は、腫れを抑えるために冷湿布を使用しましょう。1回の冷却は20分程度を目安に、1日に数回行います。
安静にする
手術直後は、激しい運動や重い物を持ち上げるなどの活動を控え、安静に過ごすことが大切です。過度の運動は腫れや出血を悪化させる可能性があります。
処方された薬を服用する
歯科医が処方した抗生物質や鎮痛剤は、指示通りに服用しましょう。これにより、感染症を防ぎ、痛みをコントロールすることができます。
インプラントを埋め込んだことによる痛みや腫れの殆どは、インプラントを埋める前に歯茎を切開することから起こります。そのため、痛みや腫れを抑えるために気をつけなければならないのは、以下のようなものです。
- 食事は麻酔が切れてからにする
- 処方された薬は全て服用する
- 歯みがきは手術した部位に当たらないようにする
- 柔らかい食べ物を選ぶ
- 刺激物はとらないようにする
- 飲酒、熱い風呂、サウナ、激しい運動は避ける
インプラント手術後の飲酒のリスク
インプラント手術の前後は、アルコールの摂取を控えます。アルコールを飲むと血液の流れが良くなるため、傷口から出血を起こして、なかなか傷が塞がらない場合があります。
また、アルコールは傷口に刺激になるので、それが原因で痛みを感じたり、炎症を起こしやすい状態になることもあります。
毎日お酒を飲む習慣がある方は、手術後、傷口が治るまでの間は、アルコールを控えるように注意しましょう。
インプラント手術後のタバコのリスク
喫煙は一般的に免疫低下を起こしますので、インプラント手術後に煙草を吸うと、傷口の感染を起こしやすくなります。細菌に感染して傷口が腫れるだけでなく、歯周病菌に感染して歯周病を起こしやすくなりますので、手術後は出来るだけ禁煙するようにお願いします。
インプラント手術後に注意すべき症状
通常の範囲を超えた痛みや腫れが続く場合、または異常な出血や膿が出る場合は、すぐに歯科医に相談する必要があります。これらは感染症や他の合併症の兆候である可能性があるため、適切な治療を早期に受けることが重要です。
強い痛みが続く
鎮痛剤が効かないほどの痛みが長期間続く場合、異常が考えられるため、早めに歯科医を受診してください。
異常な腫れや出血
腫れが1週間以上続いたり、出血が止まらない場合は、感染症のリスクがあります。
インプラントの痛みと腫れに関するQ&A
インプラント手術後の痛みや腫れは、個人によって異なりますが、通常は2~3日後から始まり、数日から数週間程度続くことがあります。ただし、痛みや腫れの程度は患者の状態や手術の複雑さによって異なるため、個別の症状については歯科医師に相談することが重要です。
インプラント手術後の痛みを軽減するためには、処方された鎮痛剤を適切に服用することが重要です。また、腫れを抑えるために氷や冷却パックを患部に数分間当てることも効果的です。口を開ける動作や食事には注意し、柔らかい食べ物を摂るようにしましょう。手術後の過度な運動や刺激物の摂取は避けるようにし、指示されたケアを守ることも重要です。
インプラント手術後の腫れを軽減するためには、手術後すぐに氷や冷却パックを患部に数分間当てることが効果的です。腫れがひいていく過程で、頭部をやや高い位置に保つことも推奨されます。また、処方された抗生物質や消炎剤を適切に服用し、指示された口腔ケアを守ることも重要です。
まとめ
インプラント手術後に腫れや痛みが起こりにくくなるために気をつけることをご説明しました。術後の生活については担当医におききください。