虫歯

唾液が虫歯から歯を守ってくれるって本当?

唾液が虫歯から歯を守ってくれるって本当?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

唾液には様々な作用があり、虫歯予防に欠かせない役割を果たしています。虫歯菌が出す酸で歯が溶かされる(脱灰)のを修復する再石灰化という作用があります。唾液がどのように歯を守ってくれているのかご説明します。

唾液が歯を守る働き

唾液には多くの作用があり、その中でも歯を守るのは以下のような働きによります。

  1. 中和作用・・糖分を多く含む食物を摂取した際に、口内の細菌が糖を代謝して酸を生成します。この酸が歯のエナメル質を溶かして虫歯の原因となります。唾液には中和作用がありますので、酸を中和してエナメル質が溶けるのを防ぎます。
  2. 再石灰化・・唾液にはカルシウムやリン酸などのミネラルが含まれおり、これらのミネラルは酸によって溶けたエナメル質の修復を行ってくれます。この働きは再石灰化と呼ばれます。
  3. 抗菌作用・・唾液には抗菌物質が含まれているため、口腔内の虫歯菌などの細菌が増えるのを抑える役割をします。
  4. 洗浄作用・・唾液には食べ物のかすや細菌などを口腔内から洗い流す働きがあります。これにより、歯に汚れがついて細菌の塊である歯垢に変わるリスクを減らします。

脱灰と再石灰化

歯の構造

歯はエナメル質やセメント質、象牙質から出来ており、これらは石灰化したミネラル(リン酸カルシウムなど)の結晶でできています。

虫歯の原因菌が作り出した酸は、歯の結晶をリン酸とカルシウムに分解し、同時に歯からミネラルを奪います。これを脱灰といいます。

口の中は普段は中性に近い弱酸性に保たれていますが、食後または甘いものを食べた後は、虫歯の原因菌が酸を作り出すため、酸性に傾いて脱灰が起こります。

一方、唾液には酸性に傾いた口の中を中性に戻す作用があって、食事によって口の中が中性に近づくと、唾液中のミネラルが、エナメル質の溶けた部分を修復してくれます。

この唾液の修復作用を再石灰化といいます。つまり、お口の中では脱灰と再石灰化が繰り返されています。

再石灰化が行われていても虫歯になってしまうことがあるの?

歯の脱灰と再石灰化

脱灰と再石灰化のバランスが取れていれば、虫歯にはなりません。

しかし、甘い飲み物やお菓子などを1日に何度も飲食していると、細菌は酸を作り続けることになるので脱灰し続け、唾液による再石灰化が追いつかなくなってしまいます。そのため酸によってどんどん歯が溶かされ、虫歯が進行してしまうのです。

これらを改善するためには、一日の決まった時間にだけ甘いものを飲食するように
食生活を改善することが必要です。

それに加えて、歯ブラシやデンタルフロスなどを使って丁寧に歯磨きなどのデンタルケアを行い、数ヶ月に一度は歯医者の定期健診を受けて細菌の棲み家である歯垢や歯石を徹底的に除去することが大切です。

健康な歯が虫歯になるメカニズム

虫歯の進行

虫歯を作る大元の原因は、歯垢(プラーク)に含まれている細菌で、虫歯を引き起こす菌としてはミュータンス菌が有名です。ミュータンス菌は生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中にはおらず、両親や周囲の人から感染します。

細菌は糖分をエサにして、乳酸や酢酸などの強力な酸を作り出します。歯の表面は硬いエナメル質に覆われていますが、細菌の出す酸によって歯の表面のミネラルバランスが崩れて歯が溶かされていくのが虫歯というお口の中の病気です。

虫歯の進行はC0、C1、C2、C3、C4という記号で表されます。

唾液の働き

唾液には様々な働きがあり、お口の中や身体の健康を守っています。

食に関する唾液の働き

1.食べ物の消化を助ける

胃の中で消化しやすくなるよう、唾液に含まれる酵素が食べ物をやわらかくしてくれます。

2.食べ物の飲み込みやすくする

唾液が食べ物を包み込んでやわらかくし、食道の表面の粘膜もやわらかくしてくれます。

3.食べ物を美味しく感じさせる

唾液の中に味の成分が溶け出し、味覚を感じやすくしてくれます。

お口の中を守る唾液の働き

1.口の中を清潔に保つ

お口の中の汚れを洗い流す、お口の中を保湿して口臭を防ぐ、お口の中の細菌の増殖を防ぐなどのはたらきがあります。

2.むし歯になりにくくする

唾液に含まれるミネラルが歯の石灰化を促進して虫歯になりかかっている歯を修復します。唾液によってお口の中のpHが中性になり、虫歯を防ぎます。

全身の健康を守る虫歯の働き

1.細菌の侵入を防ぐ

唾液に含まれるはリゾチームやペルオキシダーゼなどは、殺菌,抗菌、抗カビ作用を持っており、殺菌、抗菌、抗カビ作用があります。またムチンが含まれるネバネバした唾液は、口の粘膜を刺激やウイルスの侵入から守ってくれています。

2.活性酸素を減少させる

食べ物に含まれる発がん性物質によって出る活性酸素を、唾液の成分が分解します。

唾液をたくさん出すためには

唾液腺の位置

唾液による再石灰化を促すためには、唾液をたくさん出すことが重要です。そのためには、噛む回数を多くして、良く噛んで食べることです。

梅干しやレモンを想像するとじわっと唾液が出てくると思います。酸味のあるものは唾液腺を刺激して、唾液を出すのです。

唾液腺を刺激して唾液を出す方法は、簡単です。舌を前に出したり、左右に動かしたりすることで唾液腺を刺激しましょう。指で直接唾液酸をマッサージすることも効果的です。その場合にマッサージしていただきたいのは、次の3カ所です。

耳下腺

頬と耳たぶの間に指をあてて奥から円を描くように回す

顎下腺

耳の下からあご先まで内側の何ヶ所かを指先で押す

舌下腺

顎の真下から舌を突き上げるように両方の親指で押し上げる

それぞれ強すぎない力でやさしく行いましょう。

唾液や虫歯に関するQ&A

唾液は虫歯から歯を守ってくれるのですか?

唾液は虫歯から歯を守る役割があります。

唾液の再石灰化とは何ですか?

唾液の再石灰化は、歯の脱灰(酸によって溶かされる)を修復する作用です。

脱灰と再石灰化のバランスが取れていれば虫歯にはならないのですか?

はい、脱灰と再石灰化のバランスが取れていれば虫歯にはなりません。しかし食べ物・飲み物や虫歯菌の出す酸でどんどん脱灰していく環境では、再石灰化が追いつかず、虫歯になってしまいます。

まとめ

虫歯菌

唾液には虫歯菌が引き起こす歯の溶解を修復する再石灰化の作用があります。虫歯は糖分をエサにして酸を作り、歯の表面のミネラルバランスを崩し溶かしてしまいます。

しかし、唾液は酸性な口の中を中性に戻す作用があり、食事後に再石灰化を促して歯を修復します。しかし、甘いものや飲み物を頻繁に摂取し続けると脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、虫歯が進行します。

定期的な歯磨きや歯科検診、食事改善も重要です。また、唾液には食べ物の消化を助ける役割や口の清潔を保つ働きもあります。また、唾液を増やすためには噛む回数を増やすことや酸味のある食べ物を摂ることが効果的です。特定の唾液腺を刺激する方法もあります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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