現代の子供たちは顎が小さく、歯の本数が足りない子が増えている反面、過剰歯といわれる、歯の本数が多く生えてくる子もいます。過剰歯は永久歯への生え変わりを邪魔する場合は抜歯しなければならないため、歯科での診察や観察が欠かせません。子供の過剰歯はどのようにして出来るのか、治療はどうすれば良いかについてご説明します。
目次
過剰歯とは?
過剰歯とは、通常の歯の本数以上に歯が生えてくる現象を指します。人間の乳歯は20本、永久歯は32本が一般的ですが、過剰歯がある場合、それ以上の本数の歯が生えてくることがあります。
過剰歯は歯冠が通常よりも小さい場合が多く、乳歯よりも永久歯に多くみられます。女性よりも男性に多いという特徴もあります。
過剰歯は子供の場合も女児よりも男児に多く、30~40人に1人くらいの割合でみられます。乳歯から永久歯への生え替りの始まる6~7歳前後にレントゲンを撮った際に見つかる場合が多いです。
歯が多くてもいいじゃないかと思うのは早計です。過剰歯は骨の中に埋伏している場合も多く、正常な向きではなく上下が逆転してしまっている場合もあり、他の永久歯が生えるのを邪魔したり、歯並びを悪くすることもあります。
- 過剰歯は乳歯にも永久歯にも見られる
- 一般的には前歯に多く発生する
過剰歯はどうして出来るの?
歯は、顎の骨の中にある歯胚という歯の卵から作られますが、過剰歯は歯胚が多く作られたり、2つに分かれたりすることで出来てしまいます。
過剰歯が出来てしまう原因は明らかになっていませんが、そのままにしておくとリスクがある場合があるので、放っておくわけにもいきません。過剰歯があることによって永久歯が生えてくるスペースが塞がれてしまう場合は、過剰歯を早めに抜歯しなければなりません。
子供の過剰歯の原因
過剰歯がなぜ発生するのか、その原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や発育異常が関与しているとされています。過剰歯の家族歴がある場合、その子供にも過剰歯が見られる可能性が高いです。また、歯の発育中に異常が生じた結果、余分な歯が形成されることも考えられます。
- 遺伝的な要因
- 発育異常によるもの
過剰歯は何が問題になるの?
過剰歯は正常な歯と同じように生えてくる(順正過剰歯)こともありますが、逆向きに生えてくる「逆性過剰歯」や、真横になった状態で歯茎の中に埋まっている「水平埋伏歯」である場合もあり、周囲の歯に影響を与えることも多いです。
また、過剰歯が正常に生えている歯や歯並びに影響を与えるのは、生えてくる場所の問題もあります。例えば、上の前歯の正中部に過剰歯が歯茎の中に埋まっている状態になっていると、過剰歯が前歯の歯根部分に当たって押してしまい、前歯の1番同士の間に隙間が出来てすきっ歯になってしまうことがあります。
このような場合は永久歯に影響が出ますので、早めに抜歯した方が良いでしょう。永久歯に影響が出ないような位置に過剰歯が埋伏している場合は、そのまま経過観察することもあります。
しかし上顎の正中部に埋伏している過剰歯を抜歯するのは簡単ではなく、その付近には動脈や神経があり、近接している歯の歯根と近いこともあり、それらを傷つけずに抜歯しなければ、しびれや出血が起こるリスクがあります。
過剰歯が周囲の歯を押して、周囲の歯の歯根が溶けてしまう場合もあります。このように周囲の歯に悪い影響を与える場合は、過剰歯をすぐに抜歯しなければなりません。
抜歯が困難なケースは、お近くの大学病院などをご紹介します。
過剰歯を放置した場合のリスクについて
過剰歯を放置すると、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
1. 不正咬合を起こすリスク
過剰歯があることで、他の歯の位置がずれたり、スペースが狭くなったりして、歯並びが乱れることがあります。特に、前歯に過剰歯がある場合、見た目にも影響を与え、将来的に矯正治療が必要になるケースも少なくありません。
2. 噛み合わせの異常
過剰歯が原因で噛み合わせが正しく機能しなくなることがあります。噛み合わせの異常は、食べ物をしっかりと噛むことが難しくなったり、顎関節に負担をかけたりするため、顎関節症などの顎の問題を引き起こすリスクがあります。
3. 隣接する歯への影響
過剰歯が他の正常な歯に圧力をかけたり、スペースを占有することで、隣接する歯が正しい位置に生えなくなることがあります。これにより、他の歯が重なって生える「叢生(そうせい)」や、歯の根が曲がってしまう「歯根吸収」などの問題が発生することがあります。
4. 虫歯や歯周病のリスク増加
過剰歯があると、口腔内の清掃が難しくなり、歯垢がたまりやすくなります。特に歯と歯の間や過剰歯の周囲は、歯磨きが行き届きにくい部分となり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。これにより、過剰歯だけでなく、周囲の健康な歯も影響を受ける可能性があります。
5. 見た目の影響
過剰歯が前歯にある場合、見た目にも大きな影響を与えます。歯並びが乱れていると、笑顔や話す際に気になることが多くなり、子供の自己肯定感やコミュニケーションに影響を与えることも考えられます。
6. 成長発育への影響
子供の成長期において、過剰歯が放置されると、口腔内の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、顎の成長に影響を与え、顎が正しい形で成長しないこともあります。結果的に、後々に外科的な治療が必要になることもあります。
過剰歯は健診で診断されることが多い
過剰歯の早期発見には、定期的な歯科健診が非常に重要です。歯科医院では、レントゲン検査や口腔内の視診を通じて過剰歯の有無を確認します。早期に診断できれば、将来的な歯列不正や噛み合わせの問題を予防することができます。子供の定期健診は、最低でも年に2回は受けることが推奨されています。
- 定期健診の重要性
- レントゲン検査での診断
- 早期発見のメリット
子供の過剰歯を治療するには?
過剰歯が見つかった場合の治療は、抜歯によって過剰歯を取り除き、永久歯が生えてくる際に悪い影響を与えないようにします。
歯茎の中に過剰歯が埋まっているのがレントゲンやCTでの撮影データで確認された場合は、歯茎を切開して埋伏している過剰歯を除去します。
過剰歯が埋まっている場所や、周囲の血管や神経との位置関係によっては、取り除くのが難しいケースもあります。また、他の歯に影響がないと考えられる過剰歯は経過観察の対象になります。
子供の過剰歯が疑われるケースは?
過剰歯は上の前歯の中央部分でよく見られますので、前歯の間が空いてきた場合は、過剰歯が埋まっている疑いがあります。
しかし乳歯から永久歯に生え変わる時期には、歯と歯の間が空いてきてすきっ歯のように見えることが珍しくありませんので、過剰歯の診断には、レントゲン撮影が必要です。
乳歯が抜けた後、永久歯が生えてくる気配がない場合も、過剰歯が歯茎の中に埋まっている疑いがあります。こちらもレントゲンを見ればわかりますので、歯科を受診するようにしましょう。
子供の過剰歯に関するQ&A
過剰歯とは、決まった本数よりも多く歯が生えてくる状態を指します。通常よりも小さな歯冠を持ち、主に乳歯から永久歯に多く見られます。男性に女性よりも多くみられる傾向があります。
過剰歯が生じる具体的な原因はまだ明確ではありませんが、歯胚(歯の卵)が過剰に生成されたり、2つに分かれたりすることによって発生します。過剰歯は放置するとリスクがあるため、適切な処置が必要です。
過剰歯が見つかった場合の治療は、抜歯によって過剰歯を取り除き、永久歯の生えてくる際に影響を与えないようにすることです。過剰歯が歯茎の中に埋まっている場合は、歯茎を切開して取り除く手術が行われることもあります。ただし、過剰歯が他の歯に影響を及ぼさない場合は経過観察されることもあります。
まとめ
子供の乳歯が20本以上、永久歯が28~32本よりも多い場合、過剰歯といいます。過剰歯は通常の歯のサイズよりも小さく、向きや場所が悪いと、他の歯に悪い影響を与えますので、子供の過剰歯の場合は抜歯することが殆どです。
抜歯するのが難しい場所に過剰歯があるケースでは、他の歯に影響がない場合は経過観察となりますが、早く抜いた方が良いと判断される場合は、大学病院の口腔外科などで抜歯することをおすすめします。