「虫歯はどうして出来るの?」
「虫歯は子どもがなるもの?大人は虫歯になりにくいの?」
子どもの時に虫歯にかかって治療を受けた方は多いと思います。虫歯はどうして出来るのでしょうか?そして、大人は子供に比べて虫歯になりにくいのかについてご説明します。
虫歯が出来る原因とは?
ミュータンス菌に感染した
虫歯が出来る直接的な原因は、虫歯菌が酸を出して歯を溶かしてしまうことです。
虫歯菌の代表として良く知られているのはミュータンス菌ですが、虫歯を引き起こす原因となる細菌は10種類くらい発見されています。
その中でも酸をたくさん出して虫歯を作りやすいのがミュータンス菌です。
虫歯菌への感染は親子感染が最も多い
生まれたばかりの赤ちゃんのお口には虫歯菌はいないのですが、ご両親や周囲の大人から虫歯菌に感染してしまうことは、最近では良く知られるようになりました。
特に離乳食の時期に親と子が同じスプーンや箸で食べることで赤ちゃんが虫歯菌に感染するケースが多いので、注意が必要です。
- 虫歯の感染源の多くは「母子感染」
- 母子でスプーンを共有することで起こることが多いので注意しましょう
ミュータンス菌がお口に入るとどうなるの?
ミュータンス菌はお口の中にある食べ物や飲み物に含まれている糖分を分解して、グルカンというネバネバ物質を作り出します。
このネバネバした物質が歯の表面についたものが歯垢(プラーク)です。歯垢は細菌の塊で、歯みがきの磨き残しで歯と歯の間などに付いたままになって時間が経つと、更に細菌が増えて、バイオフィルムと呼ばれる膜が出来ます。
バイオフィルムはバリアのようになっていて、歯みがきで落とすことが困難になります。そしてバイオフィルムの中で、細菌がどんどん増えていき、酸を出し続けます。
歯の表面のエナメル質は人間の身体で一番硬い組織です。しかし虫歯菌の出す酸には弱く、酸に晒されると少しずつ溶けていってしまいます。やがて歯の表面に穴が開いて、歯の深部に向かって虫歯が進行していきます。
虫歯が出来るメカニズムとは?
- 細菌の存在・・口内には無数の細菌が存在しますが、特に「ミュータンス菌」と呼ばれるものが虫歯の原因となることが多いです。
- 糖分の分解・・ミュータンス菌は糖分をエサにして酸を生成し、この酸が歯の表面を攻撃します。
- エナメル質の溶解・・酸によってエナメル質が徐々に溶かされ、歯の内部へと侵食していきます。
このプロセスが続くと歯に穴が開き、痛みを伴う虫歯へと進行します。
歯の脱灰と再石灰化
お口の中は普段は中性に近いpH7くらいを保っています。
pHはまたは「ペーハー」または「ピーエッチ」と読み、「水素イオン指数」のことです。pHはその液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを1から14までの数値で表します。
pH7がちょうど真ん中で「中性」を示し、phが7より小さいと「酸性」、7より大きいと「アルカリ性」を示します。
ご飯やパンや甘いものを食べると、虫歯菌が糖分をエサにして酸を出します。その酸によって、歯のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出すことを「脱灰」と呼びます。pHの値が5.5より下がったときに脱灰が始まります。
一方、お口の中の唾液には酸を中和する「緩衝能」という作用があり、唾液の中に溶け出したリンやカルシウムなどのミネラルがエナメル質の表面に取り込まれることを「再石灰化」と呼びます。
このように、身体には本来抵抗力があり、虫歯菌の出す酸によって「脱灰」が起こって虫歯になりかけても、すぐに唾液の作用で「再石灰化」が起こり、修復されるようになっているのです。
子供は虫歯になりやすい?
子供に虫歯が多いのは、歯のエナメル質が大人に比べて弱いからです。
エナメル質は歯の表面を覆う固い組織ですが、乳歯のエナメル質は永久歯に比べると量が少なく薄いのが特徴です。
更に、生え変わってすぐの永久歯は大人の永久歯と比べて軟らかいため、子供の歯は乳歯も永久歯も虫歯菌の出す酸に溶かされやすく、虫歯の進行も早いのです。
大人が虫歯になりにくい理由とは?
一般的に、大人は子供に比べて虫歯になりにくいとされています。その理由は以下のような要素が関係しています。
- 唾液の働き・・唾液には歯を保護する作用があり、酸を中和する働きがあります。大人になると、唾液の分泌が安定し、口内環境が整うことで虫歯が出来にくくなります。
- 食生活の改善・・成長と共に、甘いものや間食を控える傾向があり、糖分の摂取量が減少することで虫歯のリスクが低下します。
- 歯磨きの習慣の確立・・大人になると、定期的な歯磨きの習慣が身に付き、歯垢が溜まりにくくなります。
大人の虫歯は二次虫歯と根面う蝕に注意
大人になるとエナメル質が厚みや硬さが増して頑丈になりますので、新しく虫歯が出来る頻度はそれほど多くありません。
二次虫歯とは
大人の虫歯は過去に虫歯治療をした部分が再び虫歯になるということが起こります。これを二次虫歯(二次カリエス)といいます。
二次虫歯は、詰め物や被せ物の治療をしてから長い年月が経つと、経年劣化や歯の摩耗によって詰め物や被せ物と歯の間に隙間が出来て、そのすき間から虫歯菌が入り込んで歯の象牙質を溶かしていくというものです。
詰め物や被せ物の下で虫歯になりますので、二次虫歯はとても見つけにくく、見つかった際には既にかなり症状が進んでしまっていることが多いです。
根面う蝕とは
65歳以上の方に多い虫歯は、根面う蝕です。歯周病や加齢によって歯肉が下がると、今まで歯茎の中に埋まっていた象牙質がむき出しになります。象牙質はエナメル質の内側にある組織で、エナメル質と比べてかなり柔らかいため、虫歯菌の出す酸によって溶けやすく、こちらも進行が早いため注意が必要です。
虫歯の出来方と大人の虫歯に関するQ&A
大人の虫歯には二次虫歯と根面う蝕という特徴があります。大人の虫歯の特徴として、二次虫歯と根面う蝕があります。二次虫歯は、以前に治療を受けた詰め物や被せ物の周囲で再び虫歯が進行する現象です。詰め物や被せ物の経年劣化や摩耗によって隙間が生じ、虫歯菌が侵入して象牙質を溶かしていきます。
根面う蝕は、65歳以上の人に多く見られる虫歯の一形態です。歯周病や加齢により歯茎が下がると、象牙質が露出し、虫歯菌によって溶かされやすくなります。根面う蝕は進行が早く、注意が必要です。
子供は大人に比べて歯のエナメル質が弱く、乳歯や生え変わったばかりの永久歯は虫歯になりやすいです。
子供の歯は大人に比べて歯のエナメル質が薄く、乳歯のエナメル質は量も少ないため、虫歯菌の酸に溶かされやすくなっています。また、生え変わったばかりの永久歯も大人の永久歯に比べて軟らかいため、虫歯の進行が早いです。
子供の歯は虫歯に対する抵抗力が弱いため、適切な予防策や歯磨きの指導が重要です。
ミュータンス菌は食べ物や飲み物の糖分を分解し、歯垢やバイオフィルムを形成します。
ミュータンス菌は口の中の食べ物や飲み物に含まれる糖分を分解し、グルカンと呼ばれるネバネバした物質を作り出します。このネバネバした物質が歯垢(プラーク)となり、細菌の塊となります。
歯垢はバイオフィルムとして表面に形成され、細菌が増えていきます。バイオフィルムは歯磨きで落としにくく、細菌が増殖し酸を出し続ける環境を作ります。
まとめ
大人の歯は子どもの歯よりも硬く虫歯にはなりにくいのですが、二次虫歯や根面う蝕には気をつけなければなりません。
そのため大人の方には、虫歯や歯周病予防のために定期健診をお受けいただくことをおすすめしています。定期健診では歯周病検査や歯のクリーニングを行い、虫歯や歯周病を予防するとともに、もし虫歯や歯周病になったとしても出来る限り初期の段階で治療に入ることを目的としています。
当院では予防歯科に力を入れています。