口呼吸は歯並びや全身の健康に良くない影響があることがわかっています。では、口呼吸を鼻呼吸になおさずに常にそのまま続けていれば、お子さんの歯並びはどうなるのでしょうか?また、身体に悪い影響はないのでしょうか?口呼吸の害についてご説明します。
目次
口呼吸を続けていたらどうなるの?
自分では鼻呼吸をしているつもりでも、気付いたら口が開いているという大人の方もおられます。
口が開いていると上の唇の筋肉が緩んで力が入っていない状態になります。通常は上唇の筋肉が上の前歯を押さえており、その力によって上の前歯が真っ直ぐに生えます。
ところが上唇の力が入らない状態では前歯を抑えるる力が働きません。逆に舌が上の前歯を押し続けますので、少しずつ上の前歯が前に動いていき、出っ歯(上顎前突)になってしまいます。
開咬と呼ばれる不正咬合になるリスクもあります。舌は上の前歯を押すと同時に下の歯の上に乗っています。その状態では舌が上下の前歯の間を押し広げて隙間を作ってしまいます。
また、舌は前歯を前に押しますが、奥歯を外に押す力がありません。そのため頬が歯を内側に押す力が働いて、奥歯が内側に傾いてお口の中が狭くなります。
このように口呼吸が原因で舌や唇、頬の筋肉の使い方が悪くなり、歯のアーチを正しい位置から歪めてしまうのです。
口呼吸による歯並びへの具体的な影響
顎の発達不良
口呼吸を続けることで、上顎や下顎の成長に影響が出る可能性があります。口を常に開けた状態でいると、舌が正しい位置(上顎の内側)に収まらず、顎が狭くなってしまうことがあります。その結果、歯並びが乱れやすくなり、出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)の原因となることがあります。
開咬のリスク
口呼吸により、前歯が完全に閉じない「開咬」という歯列不正が発生するリスクが高まります。これは、常に口を開けていることで、前歯に力がかからず、歯が正しく噛み合わなくなるためです。
舌にはそんなに力があるの?
舌が歯を押す力は約500gといわれています。500gといえば、ペットボトル1本の重さと同じです。一方、唇の力は約100~300gあり、その力が毎日歯を押していることになります。
では、矯正治療で歯にワイヤーをつけた場合の、歯にかかる力はどれくらいでしょうか。矯正用のワイヤーは約2~3gで歯を押して少しずつ歯を動かしていきます。
矯正装置によって歯にかかる力は以外と少ないことがおわかりいただけたと思います。逆に舌や唇の力は大きく、変な向きに力がかかると、歯が正常な位置から動いてしまうのです。
歯列矯正で歯並びをきれいにしても癖が直らなかったらどうなる?
口呼吸や舌で前歯を押す癖が原因の不正咬合の場合は、癖を直さない限り、歯並びだけを治しても、舌が歯を押し続けるため、また元の状態に戻ってしまいます。
矯正治療終了後は歯並びが元に戻らないようにリテーナーという装置をつけるのですが、癖がある患者さんは歯並びが戻りやすいため、一生リテーナーをつけなければならないということになってしまいます。
舌や唇、頬の悪い習慣が直らない限り、きれいな歯並びを維持することは難しいのです。そのため、まず口呼吸や舌の癖を直す必要があります。
口呼吸は歯並び以外にも影響がある
マスクを着用する機会が増えたこともあり、大人にも口呼吸になりがちな人が増えています。口呼吸は身体にさまざまな影響を及ぼすといわれており、なるべく意識して鼻呼吸を心がけることが大切です。
口呼吸をすると身体にどんな悪影響があるの?
- 風邪のウイルスなどによる感染症やアレルギーを発症しやすい
- お口の中が乾燥して虫歯や歯周病、口臭を起こす原因になる
- 歯並びが悪くなりやすい
- 顔の筋肉が弛緩しているため年を取って見える
鼻呼吸をした方がいい理由は?
- 鼻から空気を吸うと細菌やウイルスを体内に取り込む前に排除できる
- 口呼吸によって歯周病を発症すると、糖尿病が悪化するリスクがある
- お口の中の乾燥を防いで唾液を出しやすくする→虫歯や歯周病の予防に繋がる
口呼吸を改善するための方法
トレーニング
口呼吸を改善するためには、口の周りの筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。例えば、舌を上顎に押し付ける練習や、口を閉じて鼻で呼吸する習慣を身につけることで、口呼吸から鼻呼吸への改善が期待できます。
口呼吸防止グッズ
市販されている口呼吸防止グッズも有効です。寝ている間に口が開かないようにするテープや、口を閉じるためのトレーニンググッズを使用することで、自然と鼻呼吸が促進されます。
口呼吸や生活習慣はいつまでになおすべき?
不正咬合の原因が口呼吸を含めた生活習慣にあるとわかった場合は、出来れば小学3年生までに直したいところです。これは、小学3年生くらいまでなら、簡単なマウスピースを寝ている間につけるだけで舌の位置が改善できるからです。
しかし親がお子さんの不正咬合に気付くのは9才頃が多いので、9才を過ぎると、矯正治療の装置がやや複雑なものに変わります。
お子さんがいつもお口ポカンになっていないか、テレビを見ている時やゲームをしている時に、気をつけて観察してみましょう。また、鼻にアレルギーがあってアレルギー性鼻炎による鼻づまりを起こしているために口呼吸になっているケースもありますので、鼻づまりを起こしていないかも注意してみましょう。
子どもの口呼吸の歯並びへの影響に関するQ&A
口呼吸を続けると、唇の筋肉の力が減少し、舌が歯を押し続けるため、前歯が前に動き出っ歯になる可能性があります。また、舌が歯と歯の間を押し広げ、開咬になる可能性もあります。
口呼吸や舌で歯を押す癖がある場合、癖を治さないと、矯正治療後も歯並びが再度乱れる可能性があります。そのため、癖を直すことが重要となります。
口呼吸などの生活習慣が不正咬合の原因である場合、小学3年生までに改善するのが理想的です。この期間であれば、舌の位置を矯正するのが比較的容易なためです。
まとめ
お口の周りの筋肉(舌、唇、頬など)のバランスや使い方は、歯並びに影響を与えます。口呼吸の身体への弊害は大きいため、出来るだけお子さんが小さいうちになおすようにしましょう。舌の位置をなおしたり、お口の筋肉を動かす簡単なトレーニングについては、ぜひ歯科医院にご相談ください。