虫歯

歯の神経を抜くのは痛いですか?

歯の神経を抜くのは痛いですか?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

歯の痛みや歯茎の腫れなどの症状で歯科医院へ通院し、歯の神経を抜くべきと歯科医師に言われ、戸惑う患者様は多いです。今日は歯の神経を抜くことについて、ご紹介します。

歯の神経を抜く治療が必要になる理由

まず、歯の神経を抜くことが必要になる状況を説明することで、患者さんが治療の重要性を理解しやすくなります。以下のようなケースでは、神経を抜く治療(根管治療)が必要になることが多いです。

虫歯が深く進行した場合

虫歯が歯の内部の神経(歯髄)まで達した場合、歯髄が感染して炎症を引き起こし、強い痛みを感じることがあります。この段階では神経を抜く必要があります。

外傷による神経の損傷

事故や衝撃によって歯が折れたり、亀裂が入った場合、神経が露出し痛みを引き起こすことがあります。神経を抜くことで痛みを取り除きます。

歯の根に膿が溜まった場合

歯根の先に膿が溜まる「根尖病変」が発生すると、強い痛みや腫れが伴います。この場合も神経を抜く治療が必要です。

歯の神経はどこにあるの?

歯の構造

歯の神経は歯の内部にあり、歯髄(しずい)と呼ばれる組織の中に存在しています。歯髄は歯の中心部に位置し、歯根まで延びています。

歯髄には血管や神経繊維が含まれていて、歯の感覚や栄養供給の役割を担っています。神経繊維は歯根の先端部から伸びていて、歯の内部や表面の感覚を神経に伝える役割があります。

歯髄は歯のエナメル質と象牙質に囲まれているため、通常は外部からの刺激や熱から守られています。しかし、虫歯や歯にヒビや割れなどが起こると、細菌が歯の内部に侵入して歯髄に感染を引き起こして強い痛みや腫れを引き起こすことがあります。

神経を抜く際の麻酔と痛みのコントロール

神経を抜く治療は、「根管治療」とも呼ばれ、適切な麻酔が施されるため、治療中に強い痛みを感じることはほとんどありません。歯科医は以下のような方法で、患者さんが痛みを感じないようにしています。

局所麻酔

治療部位に麻酔を施すことで、神経を抜く際に痛みを感じないようにします。麻酔がしっかり効いていれば、治療中の不快感はほとんどありません。

麻酔前の表面麻酔

麻酔注射が苦手な患者さんのために、針を刺す前に表面麻酔を使い、注射自体の痛みを軽減することができます。

治療後に多少の違和感や痛みが残る場合もありますが、鎮痛剤を服用することでほとんどの場合、痛みをコントロールすることができます。

歯の神経はどんな働きをする?

歯の神経を抜く治療を行う場合は、重度のむし歯が多いです。歯の外部のエナメル質が酸で溶かされ、象牙質も溶かされると、象牙質で囲まれた歯髄空(しずいくう)という部分にある歯の神経に、虫歯菌が侵入します。それにより、痛むことが多いです。

ただ、食べ物を噛んだり飲んだりして歯自体がズキズキ痛みを伴うこともあれば、歯の痛みが全く出ないケースもあります。いきなり膿が出ることで歯肉が大きく腫れ、炎症が頬の内側の粘膜に当たることで違和感を覚えて、クリニックへ行く方もおられます。

一般的には歯の神経と分かりやすく説明しますが、専門的には歯髄(しずい)と呼びます。歯髄は神経と毛細血管、リンパ管を含んだ組織です。歯髄で重要な役割は、刺激を脳に伝達する神経部門と、歯の象牙質に血管を通じて、必要な栄養や酸素など大事なものを供給する部門があります。

神経が死んだ歯を放置したら痛い?

歯の神経が死んだ状態で歯を放置してはいけません。虫歯の原因である細菌を放置したままになるので、必ず早めに対処法を受けるべきです。当院では、神経が生きているか死んでいるか電流を流し確認する検査、パノラマ撮影、部分撮影等により総合的に担当医が診断を行います。

痛みがない場合でも重度の虫歯は、そのまま放っておくと抜歯を行わなければならなくなります。処置をしなければ、時間とともに菌はどんどん進行し、あごの骨まで到達してしまいます。歯根に膿の固まりである根尖病巣(こんせんびょうそう)を形成すると、周囲の歯や顎のみではなく、全身にも影響を及ぼす可能性があります。

神経が死んだ状態と診察や検査で確認が取れれば、根管治療を行う前に、神経を取る治療である抜髄(ばつずい)へと進みます。神経を抜くのが痛そうとご心配かもしれませんが、麻酔により痛みはありません。ただし歯茎の腫れで麻酔が効きにくい方も多いです。麻酔後、抜髄の過程で痛みを感じる時には、ドクターやスタッフへ遠慮せずに早めに手を挙げるなどしてお知らせください。

神経を抜くと歯は長く保てないの?

根管治療とは、神経を抜いた部分や歯の内部を綺麗に洗浄することです。流れを簡単にご案内します。虫歯の除去を行い、管内や根の清掃や消毒をし、根を再建して、薬剤を隙間のないよう充填し、より歯に合った被せ物(セラミックなど)を被せるという治療が通常です。器具や設備などが整った医院で行うのがより良いと考えます。

神経を抜いた歯は、虫歯になっても痛みがなく気付かなかったり、歯の色が変色したり、膿の臭いによる口臭というデメリットがあると言われます。もちろん、歯の神経があるに越したことはありません。ただ、神経があっても虫歯菌の巣になった歯を放置するよりも、神経を抜いてきちんと掃除して補強をしてあげた歯は、ケアを行えば、少しでも長く保つことができます。再発のリスクを防ぐためにも、神経を抜いた後の処置を徹底的に行ってもらいましょう。

再度、虫歯を繰り返してしまうと、残せる歯を維持できなくなり、食べ物を噛むなどの機能が低下してしまいます。

神経を抜いた後の歯のケアと予防策

神経を抜いた歯は、虫歯や感染症に対する感覚が鈍くなるため、定期的なケアがより重要になります。以下のケアと予防策を行うことで、神経を抜いた後も歯を健康に保つことができます。

被せ物の装着

神経を抜いた後の歯は脆くなりやすいため、被せ物を被せて歯を保護することが推奨されます。これにより、割れたり欠けたりするリスクを減らすことができます。

定期的な歯科健診

神経を抜いた後でも、歯科健診を定期的に受けることが重要です。歯周病や二次的な感染を防ぐために、プロによるケアが欠かせません。

毎日の口腔ケアの徹底

歯磨きやデンタルフロスを使って、虫歯や歯垢の予防に努めることが大切です。特に、神経を抜いた歯は痛みを感じなくなるため、見た目に異常がなくても内部で問題が起こっている場合があり、注意が必要です。

まとめ

歯の神経を抜く状態まで至らないよう、定期検診を活用しましょう。虫歯や歯周病の感染がないかの確認と、歯石や歯垢(プラーク)の除去を行ってもらい、お口の中の健康を保つことが大切です。予防歯科の観点からも、より多くの歯を残すことが可能になります。また、歯並びやお口に関する悩み事が何かあれば、歯医者へご相談ください。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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